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メモリアルヒットの広場

 

ここはキリのいい番号を取った方のメモリアルを保管する場所です。
私の作品で、
言葉を話せるキャラなら誰でも呼んでいただければ御挨拶を申し上げたいと思います。

作品キャラによるメモリアルレスというこのアイデアの発案者
「うなぎのねどこ」の篠崎 節さんから了承をいただきました
どうもありがとうございます。

勝手にリクエストランキング!!へGO!

5000番からのメモリアルはこちら〜

 

4700
(00/02/02)

伽羅
カイル=ミュラー(「銀河連合警察A級捜査官チーム・グリフォン」より)

 街は戦場になっていた。轟音が響くたびにビルが瓦礫に変わる。なんでも完全コンピュータ制御の戦車が暴走したそうだ。噂ではクラッカーによるウィルス混入なんて話もあるが、原因がウィルスだろうが、プログラムミスだろうが飛んでくる砲弾に違いはない。
 少なくとも生身の人間は逃げるのが最善だろう。
 周りに人のいる様子はない。というか、誰もいないと言うべきか。
 そして戦車の砲塔がこちらを向いたような気が……
 マジ?
 まるで走馬燈のように今までの人生が脳裏をよぎる。ああ、どうやら派手な死に方ができるようです。……なんて嫌だぁぁぁぁぁっ!!
おらぁっ!!
 いきなり怒号が聞こえると、横から殴られたように戦車が吹っ飛んだ。とはいえ、殴ったのはロケット弾である。更にいえばロケット弾は声を出さない。
「まだまだこの程度でくたばるんじゃねえぞぉ!」
 もう一度、戦車が横殴りに吹き飛ぶ。近くの建物に突っ込んでいく。土煙がひどく、戦車の姿は見えなくなった。
 向こうから大男が飛び出してきた。分厚い筋肉の鎧に身を包んだ2メートル超の大男が肩に太い筒を担ぎ、全身に重火器を装備している。しかしその重さを気にした様子もなく風のように駆けていく。と、その男の視線がこちらを向いた。
「おい、そこのお前!」
 え……?
 いきなりこちらに近づくと大きな箱形の物をこちらに投げつけてくる。ええぇっ!
 ドシン、とそれが足下に落ちる。逃げるのが遅れたら潰されていた。
「援護しろ!」
 はい? なんですって?
 ……確かに飛んできたのはロケットランチャーだ。これで……ですか?
「頼んだぞ!」
 大男は途中で筒を捨てて、別な武器を構えながら戦車を追っていく。
 ちょ、ちょっと待って下さい……
 なんて言ってる暇ないんだろうなぁ。
 恐る恐るその四角いものを肩に担ぐ。昔の映画みたいに前後逆に撃つわけにはいかない。ちゃんと確認して引き金をひく。
 炎の尾を引きながらロケット弾が飛んでいく。あ、あの人も近くに……
「うおっ!!」
 そんな声が聞こえたと思ったら戦車もろとも爆発に巻き込まれた。
 と思ったら爆発の光よりも更に眩しい光があふれ出た。
 おや? と思う内に今までを倍する爆発音が聞こえてきた。一瞬遅れて爆風がこちらにも来る、なんて生やさしいものじゃない。浮遊感がしたな、と思ったら瓦礫の一つに叩きつけられる。
 涙で滲む視界に入ったのは、おそらくさっきの大男が着ているだろうと思われる装甲服が戦車の砲塔をもぎ取っているところだった。
(嘘だろ……)
 それを最後に意識は闇の中に沈んでいった。

 病院のベッドで(運良く、というか奇跡的に軽傷だった)あの人がGUP(銀河連合警察)のA級捜査官だと聞いた。
 人間じゃねぇ……

4343
(00/01/22)
(00/03/28)

しのざきたかやん
大神 隼人(「夢の勇者ナイトブレイカー」より)

「悪いな。歩きながらで。
 妙にセカセカと歩く彼についていくのはなかなか大変だ。何をそんなに急いでいるのだろう?
 大通りから札幌駅の方へ向かっているようだけど……
 もう春が近いというのにチラホラと白いものが降ってきている。しかも雪の勢いは増しそうな雰囲気だ。それを見て、隣の少年は更に足を早める。
「……参ったな。」
 ポツリと呟く。
 一瞬空を見上げて、何かを思いだして音が聞こえるくらいの舌打ちをする。
「あの馬鹿……」
 口が小さく動いて三文字の名前を紡ぎだしたが、それは音にならなかった。
「篠崎、俺の知り合いに一人、変な奴がいてな、実はそいつに今日呼ばれたんだ。南口の広場で待ち合わせなんだが、馬鹿な奴でな……」
 視線を再び上に向ける。空の一点から螺旋状に白いものが舞い降りてくる。
「こんな雪の中でも屋根の下に入ろうとしないで、傘もささずに待っているんだ……」
 遠い目をする。まだ見えていないのだが、彼の目には見えているのだろう。小走りくらいになった足がそれを物語っている。
「それで、どうやら俺も馬鹿になったらしい。そういう馬鹿を一秒でも早く見てやりたくなってきたんだ。」
 風も吹いてきた。もし彼の言うとおりの人がいるのなら、斜めに降る雪の中で立っているのは大変だろう。
「どうやらメモリアルをとったらしいが、俺みたいな礼儀知らずをリクエストしたのが運の尽きだと思って諦めてくれ。」
 挨拶のように軽く手を上げると、いきなり彼は走り出した。アッという間に雪の街にその長身が姿を消す。

 逢えるかどうか分からなかったけど、そのまま真っ直ぐ駅前通りを歩いて南口に向かう。地下の「太陽の広場」の真上にあるガラスのタワー「アピアドーム」の前に人影が二つ見えた。「彼」とずっと小柄の少女だ。
 少女が背伸びをして彼の首にマフラーをかけているところだった。彼は照れくさいのかそっぽを向いていたが、少女の手を振り払うような真似はしない。
 二人とも雪まみれで寒そうに見えたけど、とても温かく見えた。

 そっか…… 今日――3月28日――は彼の誕生日だったな。

4300
(00/01/21)

かざなぎ
ジークザック(「怪盗フェイクの大冒険」より)

「よぉ、かざなぎ。ここじゃ初めてのメモリアルだな。おめでとうよ。ただなぁ……」
「何か言いたそうだな、こそ泥。」
「別に。俺は新米ごときに使う言葉なんぞ持ってない。」
「ほぉ…… なんだったらここで逮捕してもいいんだぞ、こそ泥。」
「職権乱用だな。善良な一般市民を逮捕とは恐れ入る。」
「うるさい。だいたい貴様は前から気に入らなかったんだ。ロイドさんの手前、おとなしくしているが……」
「別に新米捜査官ごときに気に入られても仕方がない。ジャニスに嫌われるなら大問題だけどな。」
「それもだ! だいたい、ジャニスさんのことだって誘拐監禁容疑にあたるんだぞ。分かっているのか! この犯罪者め。」
「やれやれ。どうしてGUPはこんな新米にA級捜査官なんて大層な役職を与えたんだ? コイツなんかせいぜい派出所の椅子を温めている程度がお似合いなのに。」
「貴様ぁ……(激昂しかける。が、ふと気を取り直す)
 まあいい、私は捜査官だ。犯罪者の戯言ごときに感情を荒立てても仕方がない。」
「へいへい…… お偉いこって。」
「(聞き流す)それよりもかざなぎさん。この度はメモリアルゲットおめでとうございます。これからの私の大活躍を楽しみにして下さい。あんなこそ泥ごとき、アッという間に捕まえて、凶悪な犯罪者に囚われのジャニスさんを助けてみせます。そして……」
「そして?(ちょっと本気の目つき)」
「(ちょっと陶酔している)そして私はジャニスさんとバラ色のせ……」
 トスッ。バタッ。
「こいつ…… 危険だな。……埋めておくか。」
 ザックザックザック……(←名前を呼んでいるわけではない)
「よし、これで憂いは全て無くなった。さ、戻るか。ジャニスが待ってるし……」

「あ、お帰りなさい。ロイドさん来てるわよ。」
「なんだって…… おい、ロイド。何の用だ?」
「うちのザック知らんか? 全然連絡がないんだが……」
「……ほれ。」
「スコップ?」

3800
(00/01/04)

Kenken
チーム・グリフォン全機(「銀河連合警察A級捜査官チーム・グリフォン」より)

〈MIAIC−001、シルバーグリフォンです。この度はリクエストいただきありがとうございます。〉
〈MIAIC−002ファイヤーロックよ。Kenken、今度はあ・た・し一人だけでリクエストちょうだいねぇ〜〉
〈MIAIC−003サンダーロックです。姉さんのファイヤーが何か言ってますけど、お気になさらないでくださいね。〉
〈MIAIC−004ランドタイガーだ。俺の活躍を見てくれよな。〉
〈MIAIC−005、ブラックホーネットです。今回は僕はあまり活躍できない、って博士は言ってたなぁ……〉
〈MIAIC−006グレイエレファントじゃよ。まあ儂は前半にそれなりに出番があったからのぉ。ホーネットもそうじゃろ?〉
〈MIAIC−007ダッシュパンサーです。でも後半のクライマックスでは私たち三機は出番がないそうです。〉
〈なんだ、ちゃんとお礼の挨拶をしたのは私だけですか。〉
〈べっつにいいでしょ? グリフォンがちゃんとやったんだから。でも嬉しいわよねぇ。Kenken、あたし達のファンなんですって。〉
〈おう、俺の火力のおかげだな。〉
〈違うんじゃない?〉
〈それは置いといて。一応これからは豪華客船の内外でのテロリストとの戦闘。さらに博士のとった意外な作戦とは?〉
〈というか、あの御仁はロクなこと考えんからのぉ。〉
〈生みの親にそういうことおっしゃいますか?〉
〈その辺は大丈夫だ。博士は細けえことは気にしねぇからな。〉
〈まあ…… そうだね。〉
〈何かあったらラシェルに振っとけばOKよ。〉
〈そういえば博士、ラシェルさんに弱いですよね。〉
〈惚れた弱み、ってやつじゃな。〉
〈ああ、でもそんな感じですよね。〉
〈おいおい、博士に聞かれたらどうするんだ……〉

「残念。手遅れだ。というわけでお前ら解体な。」
えぇ〜っ!!

3737
(00/01/01)
(00/03/28)

小次郎
小鳥遊 一樹(「夢の勇者ナイトブレイカー」より)

「やあ、小次郎君。気がついたかい?」
 何故かベッドに寝ていた。少し前の記憶がハッキリしない。
 少し離れたところでは白衣を着た男が読んでいた本をパタンと閉じているところだった。
 ……そうだ。ロクに食事も摂らないで徹夜して、なんとかレポートを仕上げて提出した直後に倒れたんだ。

「まあ、私の見立てでは睡眠不足と軽度の栄養失調による過労状態。それに緊張がとけて今までの疲労が一気にきたものでしょう。
 これの特効薬は休息、特に睡眠と栄養補給ですね。普段の生活に戻ればすぐに快復いたしますし、数日安静にしていれば何も問題がありません。」
 こちらが目覚めたのを見て、その校医――小鳥遊先生がゆっくりを帰り支度を始める。
 どうやら気がつくまで待っていてくれたらしい。外を見ると日はだいぶ傾いてきている。
「どうですか? 卒業祝いと、メモリアルをとったお祝いに何か御馳走いたしましょう。栄養補給も今の状況を解決するには必要です。」
 ちょいちょい、と呼ばれてそのままついていく。空腹のピークが過ぎたのでそんなにお腹が減っているように感じないが、食べる話を聞くとなんとなくそういうことを思い出させてくれる。
 駐車場までついていくと小さな軽自動車が待ちかまえていた。前のバンパーが派手にへこんでいたが、おそらく電柱か何かにぶつけたのだろう。
 そんなこちらの表情に気付いたのか、彼はちょっと苦笑いをする。
「ええ、直すお金が無いわけじゃないんですが…… このバンパーの傷も思い出の一つなので、なんとなく直したくないような気がして……」
 彼にもどうやら色々あるようだ。でも…… とても楽しそうだ。なんか羨ましい。
「え〜と……」
 車に乗り込んでから――予想通り狭かったが――彼は言いにくそうに口ごもる。
「実はですね、御馳走するのはレストランとかじゃないのですが…… 何か食べられないものあります?」
 何が食べられるのか分からないけど、下手に言わないで後で大変なことになっても困る。正直に言っておこう。
「貝類に甘いものですか…… 特に問題はなさそうですね。あ、でも美咲さんの作るケーキは食べた方がいいですよ。甘いものが苦手な人がいるんですが、彼女のケーキだけはいつものムッツリ顔で食べるんですよ……」
 嬉しそうに話している間に車は一軒の家に着いた。門の上には小さいながらも「小鳥遊心理学研究所」の看板がある。
「さあ、どうぞ。私の家で恐縮ですが。」

 そして小鳥遊と自分の遠い後輩が卒業とメモリアルを祝ってくれたのであった。

3636
(99/12/28)
(00/03/27)

毬谷 敦子
カイザードラゴン(「夢の勇者ナイトブレイカー」より)

〈敦子様、この度はメモリアルヒットおめでとうございます。〉
 目の前で鋼の竜が恭しく頭を垂れる。
 驚く以前に恥ずかしい。
 下手すると周囲のビルよりも巨大な鋼の竜が自分に向かって頭を下げているのだ。最初は彼(?)──カイザードラゴンに集中していた周りの視線がこちらに集まってくるのがいやでも感じられる。
 かなり、いや、とても恥ずかしい。
〈なかなか管理人が遅筆で大変お待ちになったと思いますが、あの者に代わり謝罪いたしたいと思います。〉
 相手はそんなこともお構いなしに言葉を続けている。
 どうやって説明しようか考えていると、不意にカイザーが口篭もった。
〈え……? はい、はい…… あ、わたくしとしたことがすっかり失念をしておりました。〉
 どうやら見えない誰かと話しているらしい。それが済んだのか、再びこちらに深々と頭を下げる。
〈申し訳ございませんでした。敦子様がお恥ずかしいおもいをしているとはこのカイザー、まったく気づきませんでした。〉
 それでは、と巨大な手を差し伸べてくる。鋭い爪も人間の大きさから見れば金属の固まりだ。その爪の斜面を登り、手のひらに乗る。
〈よろしいですか? それでは参ります!〉
 カイザーが大地を蹴った。当然ながらその重量で下のアスファルトにドラゴンの足跡が残ったのは言うまでもないが。
 高度をとるとバーニアをふかし更に上昇。でも確かカイザードラゴンの飛行能力って……
〈ご安心下さい。チェンジ! カイザージェット!〉
 目の前で赤い光がはじけ、視界が一瞬遮られると、いつの間にかに周囲を計器に囲まれたコクピットの中にいた。
〈あ、お気を付け下さい。半分以上ダミーとはいえ、迂闊に触られるとわたくしもどうなることか…… それより空の旅へとお連れしましょう。わたくしの出力では引力圏を脱出するほどではありませんが、地球の上でしたら、どこへでもよろしいですぞ。〉
 そしてのんびりと空の旅。

 ……夢魔が現れて、彼女に呼ばれるまでだったけど。

3535
(99/12/24)

小次郎
パイロット全員(「夢の勇者ナイトブレイカー」より)

「あ、小次郎くん、久しぶりだね。前にあったのは去年の9月なんだね。ボクも久しぶりに呼ばれてなんか緊張するよ〜」
「初めまして、小次郎さん。メモリアルを踏んだのはクリスマス・イヴだったのに、御挨拶が遅れて申し訳ありませんわ。」
「え〜と、3535番ですね。おめでとうございます。」
「……で、なんでお前がいるんだ?」
「ずいぶんな言われ方だな、ハヤト。俺だって『シャドウブレイカー』のパイロットなんだぜ。いたっておかしくはないんじゃないか?」
「あ、バロンくん……」
「頼むからミサキ、そのバロン『くん』というのは勘弁してくれないか?」
「無駄ね。私も前に何度か言ったけど、この子が一旦決めた呼び方はまず変わらないわ。」
「……まあいい。変な真似さえしなければ俺も何もする気はない。」
「というか、ちゃんと小次郎さんに挨拶しないと……」
「面倒くさいな…… だいたい、俺がそんなことする義理がない。じゃあ後は任せたぞ。」
「あぁ〜 隼人く〜ん。」
「行ってしまいましたねぇ。」
「行っちゃったわね……」
「(ちょっと思い付いたように)ミサキ、邪魔がいなくなったし、俺とどっかに遊びに行かないか?」
「え?」
「せっかくだから二人っきりで……(言いかけて急に表情が厳しくすると、いきなり振り返る。バシッ! と鋭い音が響く)」
「変な真似さえしなければ、って言わなかったか。」
「やっぱり来たか……(ふっ)」
「てめえとは一度『話し合って』おくべきだな……」
「うわぁ〜 隼人くんもバロンくんもやめてよぉ……」

「始まったわね。」
「そうですねぇ。なんとなくこうなるような気がしましたが……」
「ま、いいわ。やらせておきましょ。
 それでは小次郎さん。またいずれお会いしましょう。」
「これから夢魔との戦いも激しくなると思いますが、応援をよろしくお願いします。」

3400
(99/12/19)

MEB
怪盗フェイク(「怪盗フェイクの大冒険」より)

『貴殿の仕事をいただきに参上いたします。』
 そんなメールがいきなりやってきた。
 仕事をいただくとはどういうことだ?
 こっちは今、100台位の大口注文を受けたばかりでしばらく仕事は終わりそうにない。納期も近いから休む暇すらない。しかも何の陰謀か定時でみんな帰ってしまった。
 そんなわけで一人で黙々とマシンを組んでいるときのこのメールだ。
 ふぅ〜 いたずらにも程がある。冗談ならTPOをわきまえて欲しいものだ。
 バチッ、パチッとコネクタを繋ぐ音がだれもいないオフィスに響く。
 とにかく組み方は決まったから、あとは黙々と組むだけ。
 …………
 …………
 お? 社内の警戒システムに反応?
 誰か侵入者か? こんな会社に忍び込んだ所で何も無いのに……
 あれ? 消えた……?
 さすがに気になって表示を変え、詳しい情報を表示させる。
 ……ハッカーか? さっきの反応の痕跡すら無くなっている。そうとしか考えられない。
 しかたなく仕事の手を止めて、立ち上がろうとしたときに首筋に衝撃を感じた。そのまま意識が遠のいていく……

 と、目が覚めた。まるで机に突っ伏した格好だ。まるで眠気に襲われて寝ていたように。
 時計を見ると1時間ほど眠っていた、いや気絶していたようだ。
 机の周りには何もない。いや、ホントに何もない。さっきまで組んでいたマシンの影も形もない。ああ、今までの苦労が……
 でも盗みに入られた割には荒らされた様子がないし、他の物も盗られた様子もない。
 在庫も調べてみたら何も減っていない。というか、さっきまで組んでいたパーツまで全部もとの場所に戻っている。
 と、机の上に1枚のカードが置いてあるのに気付いた。「怪盗フェイク参上!」と。
 ……なんだなんだ? 何の権利があって人の仕事を妨害するんだ。
 さすがにやる気が無くなって帰ることにする。
 半分ふて寝のように布団に入った。

 次の日の朝のニュースで、例の大口注文の相手に泥棒が入ったらしいとのこと。何でも社長以下重役が簀巻きにされ転がされていたとか。周囲に散乱していた書類から、計画倒産を企んでいたらしく、事情聴取に連れて行かれたとか。
 確認の為に会社に行く途中、通行人とすれ違いざまに、
「どうだい? 一応は仕事をいただいたろう?」
 と。驚いて振り返ってもそれらしい人はいない。やっぱり…… 助けられたのかな?

3333
(99/12/17)

Kan
ジーク=ホーンスタード(「怪盗フェイクの大冒険」より)

「よ、待たせたな。」
 そうは言うが約束の時間の15分前である。こっちがちょっと早く来すぎただけなんだけど、彼はセオリー通りの時間にやってきた。スーツをちょっとラフめに着こなしている彼は遠くからでもよく目立つ。
 向こうですれ違ったカップルの女性が一瞬彼を目で追っていた。きっとそのことであのカップルの間でいさかいが起きるのだろう。
 ……そんな彼と一日とはいえ一緒にいられるとは楽しみだ。
「えぇと、確か3333だな。3並びとは縁起がいいな。」
 すぐそばまで来てサングラスを外す。そしてこちらに笑いかけた。
 この笑顔がまたいい。気取ったところもなく、見ていて気持ちのいい笑い方をする。この自然さが彼の一番の魅力だろう。昼の顔はまさにこんな感じだ。
「さ、行こうか。今日は一日お前に付き合う約束だからな。」
 まずは散歩を兼ねてウィンドウショッピング。意外と女の子の服を真剣に見ているようだった。う〜ん、やっぱり理由はアレかなぁ……
 それから美術館で絵の鑑賞。さすがに仕事柄(?)こういうことには詳しいようだ。
 次は映画。ホントはラブロマンス物を見る予定だったが、彼のたっての願いで話題のアクション物にとなった。見終わった後、勢いづいた彼が手近のチンピラを叩きのめして逃げたのは笑い話である。
 それから洒落たレストランでディナー。ワインだけでなく、会話のセンスにさり気ない気配りにも酔わされそうになる。
「今日は楽しかったよ。」
 あの後、店をかえてカクテルを楽しんだ。
 酔い冷ましを兼ねて誰もいない港を歩く。空は澄んで、星がきれいに見えた。
 そんな言葉が聞こえた瞬間、不意に身体の向きを変えられた。
「だから……」
 彼の顔が近づいてくる。これってもしかして……
 と、小さな電子音が静寂を不意に乱した。
「……なんてな。」
 何もなく彼が離れる。ふと気付いて時計に目を落とすと、12時をちょうど過ぎたところだ。
「生憎とシンデレラにかけられた魔法は解けてしまったらしい。」
 口元だけを歪めた謎めいた笑みを浮かべる。
「ただ、この魔術師はアフターサービスもバッチリでな、カボチャの馬車の魔法は解けないようになっているんだ。」
 ちょっと気障なセリフ。でも今の彼には似合っていた。
「さ、おうちまでお送りしましょう、姫君。」
 軽くひざまづき、手の甲に口づけをする。
 そんな動作も様になっていた。

 ――そう、「夜の顔」の彼には……

3300
(99/12/16)

Kan
田島 謙治(「夢の勇者ナイトブレイカー」より)

 なぜか追われていた。
 理由は全く分からないが追われていた。
 彼らは服も、帽子も、コートも、手袋も、靴も何もかもが黒ずくめだった。
顔も目深にかぶった帽子のせいでよく見えない。もしかしたら顔も黒いのかも知れない。
 いや、そんなことはいいや。場所も目まぐるしく変化している。ジャングルや街の雑踏の中を走っているかと思えば、今は港の倉庫街のようなところだ。
 コツコツと足音が迫ってくる。
 なんか嫌な予感がする。こういう風にコンテナの間を走っていると、行き止まりに突き当たってしまうのだ。
 ……ほら、やっぱり。
 コンテナの隙間の曲がり角を奥に進むと、見事なまでの袋小路になっていた。足音はすぐそこまで近づいている。そして男達も見えた。もう完全に袋の鼠だ。
 黒服達は揃って銃を抜く。あの中の誰か一人でも引き金を……
 銃声が響いた。
 ……男達の数と同じだけ。
 次の瞬間、頭を打ち抜かれた男達は黒い霧のようにはじけ、消滅していた。
「ふぅ、間に合いました。」
 黒光りする銃が似合いそうにない少年がすぐ横に膝立ちの姿勢でいた。
「Kanさん、先に説明しておきます。僕は田島謙治。ここはあなたの夢の中です。そしてあの黒服はあなたの心の中の『淀み』です。それが何かしらの力を得たのでしょう。夢幻界にも徐々に影響が出てきています。
 ですから…… ここで食い止めます。」
 と、不意に世界が揺れだした。周囲のコンテナも崩れ、こちらに降りかかってくる。
「ロードチーム!」
 謙治が叫ぶと、コンテナの落下が収まった。
 恐る恐る視線を上げると、六体のロボットがコンテナを支えていた。その内の一体が背中のハシゴを伸ばした。彼はそのハシゴの端に乗ると、こちらに手を伸ばす。
「さ、乗って下さい。」
 その手につかまり、そのハシゴにのる。と、その赤いロボットが変形して消防車になった。そのまま倉庫街を走る。後ろを見ると、残り五体も変形してついてきている。
 また世界が揺れた。目の前の地面が割れて、巨大な黒い怪物が現れる。
「これはこれは…… さすがにロードチームだけでは荷が重いか……
 まだまだ秘密にしておきたかったですが、こんな所でお披露目とは。
 Kanさん、ちょっと下がっていてもらえますか?」
 六台のメカと共に謙治がその怪物に近づく。左腕を構えるのが見えた。
「ブレイカーマシン、リアライズ!
 黄色い閃光と共に、巨大ロボットが姿を現した。そしてそのロボットを中心に六台のマシンも集まる。
「ロードチーム、フォームアップ! トランスフォーメーション!
 フェイズ1、フェイズ2…… ユナイト!」
 光が溢れ、その中で全てのマシンが一つになった。
「重装合体、ヘキサローディオン!」
 現れた巨大ロボットが怪物に立ち向かう。怪物に殴りかかるとそこから光が……

 目が覚めた。顔を上げるとスクリーンセーバーが踊っている。
 そうだ、デバッグ中に眠ってしまったのだ。誰が作ったのか知らないが、無茶苦茶なソースに散々苦労しているのだ。解析に時間がかかる上に、量も多くて……
 おや? メールが来ている。え? なになに、「まことに不躾ながらバッチファイルをお送りします。これで何とかなるでしょう。K」だって……
 もしかして「心の淀み」って溜まっていた仕事? やれやれ……

2929
(99/12/04)

Kenken
ラシェル=ピュティア(「銀河連合警察A級捜査官チーム・グリフォン」より)

 街中を歩いていると、不意に彼女を見つけた。
 どうやら待ち合わせのようで、いらついたように靴先がコツコツと地面を叩いている。
 相手が遅れているのだろうか?
 そんな風に思っていると、ナンパ目的風の男が彼女に近づいてきた。服のセンスもいいし、ミニスカートから伸びたスラッとした足も、そして下ろしたら背中までありそうな見事な金髪をポニーテールにまとめているのも、ちょっと気の強そうな碧眼も、全てがこの場の中で目立っていた。しかも一人でいるのだから声をかけないでいるのは何か間違っているだろう。
 馴れ馴れしく話し掛けてきたナンパ男にチラッと目を向けると、彼女は何事もなかったように歩く人々に目を戻す。その態度が気に障ったのだろう(逆恨みなのだが)、ナンパ男は語気を強めて彼女の肩にをつかもうとする。が、その無粋な手が触れる前に彼女は無造作に手を振った。ナンパ男は何かにはじかれたように吹き飛ぶと尻餅をつく。
 一瞬惚けたような顔をするが、懲りずに激昂しようとするナンパ男に彼女は最後通牒のように何かを見せた。
何を見せたのかはこの距離では分からなかったが、効果はてきめんでナンパ男は青ざめた顔で逃げていった。
 不快な出会いのせいで彼女の機嫌は更に悪くなっていた。地面を叩く靴先のビートが高まってきている。
 ……話しかけるの止めようかな。
 とも思ったけど、折角のチャンスをふいにするのも勿体ない。出来るだけ彼女を刺激しないように近づいて話しかけ……
「なによあんた! あたし今機嫌悪いん……
 あれ? Kenkenじゃない。ひっさしぶり〜」
 彼女――ラシェルは今までの不機嫌をどこかに飛ばしたかのように明るい笑顔を向けてくれる。
「あ〜 聞いたわよぉ〜 2929とったんだって? 2929だけにニクいよこのぉ、って感じ? でもお陰で助かったわ。待ち合わせの時間まで退屈だし、さっきみたいな失礼なナンパ男も来るし……」
 そういえば誰と待ち合わせなんだろう……? そんな疑問を口にしたら彼女はちょっと渋い顔をした。
「待ち合わせの相手、ねぇ…… う〜ん……
 あ、いや、秘密にするほどじゃ無いんだけどぉ…… 『待ち合わせの相手』みたいに言ったらなんかデートみたいじゃない。そういう相手じゃないのよ。」
 その割には服装にも気合入っているみたいですけど……
「あぁ〜 もう。なんか腹立ってきた。
 ねぇ、Kenken、近くに白衣を着た怪しい男いない?
 いっつもアイツは時間ピッタリにやってくるのよ。そうなら絶〜対っ、そこら辺に隠れているに決まっているのよ。」
 なるほど、お相手はあの人ですか。
「あ、なによKenken。ニヤニヤなんかして。
 それにしても腹立つ。きっとさっきのこともどこかでコッソリ見てたに違いないわ。
 いるならいるでさっさと出てきてよね。時間が勿体ないじゃない!」
「おや、そうですか。」
 彼女の背後にいきなり声と共に白衣を着た男が現れた。
 その声が聞こえるや否や、ラシェルは何かを引き抜くと、白衣男に向かってそれを振りかぶる。二人の間で火花の散るような音が聞こえる。
「ラシェル…… いきなり御挨拶ですねぇ……」
 いや、実際に二人の間に火花が散っていた。双方ともバトンの先の透明な筒の中に雷撃を封じ込めたような武器を持っていた。ラシェルが振りかぶったそれを、白衣男が受け止めている格好だ。
「だいだい、アンタと待ち合わせするときはいっつもこうよ! 毎度毎度時間ピッタリに人の背後からいきなり現れて! 時間前に来ているならさっさと出てきなさいよ!」
「そんなこと言われましても……」
 あ〜あ、すっかり別な意味で大注目です。
 こっちも同類と思われるのもなんなので、この辺で退散いたしますか。
「ナンパ男に絡まれているのに知らんふりかい、アンタは!」
「だからってスタンブレードや捜査官証明書を使うのはどうかと思いますが……」
「やかましい!」
 あ〜あ、まだやってます。やれやれ。

2600
(99/11/26)

シリウス
神楽崎 麗華(「夢の勇者ナイトブレイカー」より)

「ちょっとシリウス。後で屋上に来なさい。」
 そうすれ違いざまに言われ、驚いて振り向いたときには背中を覆い隠す長い髪とモデルのようにピンと背筋の伸ばして歩く後ろ姿しか見えなかった。

 おそらく彼女だろう。なにかやったのだろうか?

 授業も終わり、言われたとおりに階段を登る。そろそろ風の寒さが辛い時期だ。
 外に通じるドアを開くといきなり風が吹き込んできた。その流れに逆らって屋上に出ると彼女がいた。
 長い髪を風に任せ、腕を胸の前で組むようにしてフェンスに肘をついていた。物音が聞こえたのだろう。ゆっくりと彼女が振り返った。
 わずかに赤く染まった太陽の光が横顔を照らす。映画の1シーンを見ているようだ。これで彼女が微笑んでいたら文句なしだったのだが、優美な曲線を描く眉はわずかにつりあがり、少し苛立っているように見えた。
「来たわね。」
 声にも刺が混じっている。ホントに何かしただろうか?
「この前、美咲と会ってたでしょ?」
 そういきなり切り出された。彼女の言ったことに間違いは無い。そんなことが顔に出たのだろう、その少女──麗華は小さくため息をついた。そんな小さな動き一つ一つが実に絵になる。それも顔に出たらしい。ちょっと嬉しいような、そしてそれを誤魔化すような複雑な表情をする。
「とにかく……!」
 不意に彼女は言葉を切った。何か考え込むようにあごに手をかける。
 小さな疑惑が生まれたらしい。少しの間、こちらを無視したように足下を見つめている。
(なんで私はこんなに苛ついているの?)
 形のいい唇が小さく言葉を紡ぎだす。風の音だけではその呟きをかき消すことができなかった。……なんとなく分かったような気がする。
(ううん、私がそんなこと…… いや、そうよね。そうなのよね……)
「悪かったわシリウス。こんな所に呼び出したりして……」
 言われた言葉はいつものように少し高圧的だったが、横を向いてわずかにうつむいた姿はなんかしおらしく見えた。
 こちらを振り向いて正面からジッと見つめてくる。日本人にしては少し薄い色の目がエキゾチックな魅力をかもしだす。正直その瞳に魅了されていた。動けなかった。

 ……だから彼女が横を通り過ぎたのも、
「Congratulations on 2600 Hits,Sirius!」という祝いの言葉も、
 そして、頬に熱いものが触れたのも……

 気付いたのは日が落ちてからだった。

2525
(99/11/20)

毬谷 敦子
ジーク&ジャニス(「怪盗フェイクの大冒険」より)

「は、は〜い。」
 ちょっと上擦ったような声が聞こえてきた。
 休日ということで二人の所に遊びに行ったのだが、迎えてくれたのはインターホンから聞こえるそんなちょっと慌てた声だった。一瞬の間ののち、エアロックのようなトレーラーの扉が開いた。出てきた少女は声と同様に慌てていたようだ。
「あぁ! 敦子さん!」
 なんか顔がわずかに赤いようだけど、どうしたんだろう……?
(お、おぅ! 客か、ジャニス。)
 奥から聞こえてきた声もなんか同じように動揺していた。
 ……ははぁ、この相棒以上恋人未満の二人のことだ。何かの拍子にいい雰囲気になったところをチャイムの音に破られたのだろう。よくある表現だが、二人の態度には安堵と落胆が絶妙にブレンドされていた。
 今さら時間を戻すことも出来ないし、半分くらいの安堵に甘えて二人の住居――トレーラーの中にあがることにした。

 室内は少女の性格をあらわすかのようにきれいに片づけられていた。が、床にはコーヒーカップとお盆が転がり雑誌が何かに踏まれたように変形していた。
 ……なるほど。
 大体読めたような気がする。きっと、カップを片付けようとしたジャニスが雑誌に気づかずに踏んづけて、転んでしまってそのまま彼──ジークの方へ……
 分かり易すぎる。
 あまりにも安易なシチュエーションなので、つっこみのも躊躇われる。一応はいきなりの訪問なので、パタパタと少女があちこち走り回って簡単に片付けられた。(ちなみ落ちたコーヒーカップと雑誌は一番最初だった)
 そうしてちょいと落ち着くと、テーブルの上にはティカップが三つ並ぶ。
「敦子さんに紅茶を出すのもなんなのですが……」
 う〜ん、そう構えられるとこっちも困るんだけどなぁ、と思いつつカップを口に近づける。……美味しい。茶葉もどこのものかは分からなかったど良い物を使っているし、丁寧に入れているのだろう。正式な入れ方ではないようだが、十分に美味しい代物だった。隣で満足げに飲んでいるジークを見てジャニスも軟らかく微笑んでいた。
「あ、そういえば敦子さん。2525のメモリアルヒットだそうですね。おめでとうございます。」
「ほぉ! そいつは凄いな。よしジャニス、今日はご馳走だ!」

 ……なんて言われたけど、結局断った。
 な〜んかあてらそうだし。
 うらやましいな…… あの二人。
 そんな休日でした。

2424
(99/11/17)

シリウス
怪盗フェイク&ジャニス(「怪盗フェイクの大冒険」より)

(おいおい、ホントにここなのか?)
(変ねえ…… データではここに間違いないんだけど……)
(どう見ても普通の一般家庭にしか見えないぞ。)
 何か声が聞こえてくる。……夢かな?
(もしかして、アレか?)
(もしかしてそうかも……)
 いや、その声は確かに聞こえてくる。
「おいこら、起きろ。」
「ダメよフェイク。そんな乱暴な……」
「いいんだ。俺達にただ働きさせるなんて、いい度胸だ。」
「フェイク……」
 これだけ枕元で言われたら眠る方が難しくなってくる。
しかも片方がとても可愛らしい声だったので、ついつい声の主を確かめたくなったのもある。
 枕元の灯りをつけ、顔を上げるとマントに目を覆うバイザーをつけた長身の男が立っていた。その陰から顔をのぞかせて一人の長い髪の少女がいる。残念な事に、顔の半分くらいの大きなサングラスをかけているので、肝心な所が見えないが、雰囲気で結構な美少女のような気がする。そうでないなんて宇宙の真理が許さないだろう(笑)。
「よぉ、目が覚めたな。」
 そりゃあ覚める。こっちの呟きにも気にした様子もなく、その男は言葉を続ける。
「さ〜て、訊こうか。お前は何番を踏んだんだ?」
「フェイク、唐突すぎるわよ……」
「構うもんか。お前が一緒でないと駄目という時点で気づくべきだった。
 これはいつもの『アレ』のパターンだってな。」
 なるほどバレてしまったのならしょうがない。正直にメモリアルの数字を言ったら、謎のマント氏は破顔一笑した。
「よし、2424だな。なかなか調子いいようだな。おめでとうと言ってやろう。」
「もう、フェイクったら…… おめでとうございますシリウスさん。これからも私達や他の方々の応援をお願いいたします。」
「それじゃあな、寝ているところ悪かったな。じゃあ、行くか。」
「え、ええ? きゃっ!」
 マント男は少女を軽々と抱え上げると、入ってきたと思われる窓から夜の街へと飛び出していった。

(おっと、こいつを忘れるところだった。)
 そんな声が風に乗って聞こえてきた。
 閉めようと思った窓から一枚のカードが飛びこんでくる。
「怪盗フェイク参上!」
 それには、その一言だけ書かれてあった。

2345
(99/11/14)

しのざきたかやん
アイリーナ=コーシャルダン(「銀河連合警察A級捜査官チーム・グリフォン」より)

「きれいですね……」
 感極まった声で少女が呟く。
 満天の星空は陳腐な表現かも知れないが、ひっくり返した宝石箱のようだった。
 でもこの少女はそういう感想を抱いていないような気がした。
 この星々の輝きを宝石に喩えるまでもなく、純粋に自然の生み出した美ととらえているのだろう。
 そして瞬きもせず星を見つめる少女の横顔はもっと美しかった。彼女こそ自然の生み出した芸術品たるものだろう。でも彼女は……
「しのざきさん……?」
 少女の声に自分を呼んでいることに気付くのが遅れていた。どうやら横顔に見入っていたらしい。曖昧な言葉で誤魔化すと、それに気付いたのか気付かなかったのかクスッという笑みを浮かべた後に、ちょっと恥ずかしそうにうつむいた。
「あ、あの…… ちょっとやってみたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
 あまり自分から何かやりたいと言わない少女なので、ちょっと驚いた。
 断る理由もないので、彼女の好きにさせてみる。と、いうか彼女のやりたいことというのが気になったのだ。
 闇に紛れて見えなかったのだが、彼女の足下には黒い皮のケースがあった。
 あの形はもしかして……
「まだまだ人に聞かせられるほどでないのですが…… しのざきさんに誘われたことを博士に言いましたら『せっかくだから持って行け、きっと弾きたくなるから。』って。」
 予想通り、そのケースから出てきたのはヴァイオリンだった。
 スッとリーナは立ち上がり、取り出したハンカチを使ってヴァイオリンをあごにはさむ。
 星空をバックに弓を構える姿はまるで一枚の絵画のようだった。
 風が静かに流れる。さらさらとした薄茶の髪が柔らかくたなびく。
 小さく息を吸うと目を閉じた。
 一瞬の沈黙。少女の唇が何かを紡ぐようにわずかに動くと、弓を持つ手がゆっくりと動き出した。
 聴こえてきた旋律はまさに幽玄と表現すべきものだった。
 技術的にはまだ頼りないところがあったが、心に響く音色があらゆる講釈を許さなかった。
 星灯りのスポットライト、たった一人の観客。そんな小さな演奏会は有限の時間を無限にまで引き延ばす、まさに奇跡の時間であった。
 いつの間に終わっていたのだろう。余韻を味わっていると、リーナがこちらを向いてはにかんでいた。
「あ、あの…… いかがでしたか?」
 こういうとき、ボキャブラリーの無さを痛感してしまう。どれだけの言葉を重ねてもあの演奏を表現することができない。少し考えて出たのは……

「また…… 聴かせて欲しいな。」

 この一言だった。
 返ってきたのは…… 空の星々よりも輝いた笑みだった。

2323
(99/11/13)

しのざきたかやん
ジャニス=メイスクラン(「怪盗フェイクの大冒険」より)

「星はあまり見えないんですね。」
 空を見上げてジャニスが呟きくらいの声で言う。
 確かに街の灯りのせいで相当明るい星でないと見えない。冷たい風がカクテルで火照った頬に気持ちいい。
「まるで地上に星が降りてきたみたい……」
 下げた視線の先にはかの有名なホワイトイルミネーションが輝いていた。ちょっと眩しそうに目を細める。
「でも少し明るすぎるかな? 私はもう少しおとなしい方が好きかも。」
 二人で大通り公園を歩く。目の前にはオレンジ色の塔が見えた。その中央の電光掲示板の数字が21:59から22:00になった瞬間、周囲の灯りの半分以上が消えた。
 驚いているとジャニスがクスリ笑いを交えて教えてくれた。
「普段は10時までなんです。イブの日とかは12時までなんですけど。」
 イルミネーションが消えただけで急に静かに感じてしまう。さっきまであんなに明るかったせいだろうか?
 いつの間にか数歩前にいた少女がこちらをクルリと振り返った。
「ねえ、しのざきさん知ってます? ホワイトイルミネーションを一緒に見たカップルは別れるというジンクスがあるそうですよ。」
 そう言う彼女の口調は内容と違い楽しそうな響きが混じっていた。
「あ、」
 ジャニスは目の前に噴水を見つけてそこへ駆け寄って行った。
「ほら、しのざきさん、早く早く!」
 早くなんて言われてもこちらにはちょっとした「荷物」があるからなぁ……
「さ、どうぞ。」
 お言葉に甘えて、少女の横に腰を降ろす。と、その時、噴水の縁石に肩からかけていたバッグが当たりカチャン、とガラスの音が聞こえてしまった。
 隠していても仕方がないので、中身を彼女に公開することにした。
 厳選した小樽ワイン。色は白。それに東急ハンズで見つけてきたちょっとオシャレなワイングラス二つ。
「……あら? 私を酔わせてどうしようと言うんですか?」
 ちょっといたずらっぽく笑いながらも彼女はグラスを受け取る。
 透明な液体が二つのグラスに注がれる。それを目の上にかざし、液体越しに街の灯りを見つめている少女。
 二つのグラスが近づき小さな音を立てた。
『Here's looking at you,kid.』
 そして二つの声も重なる。驚いて彼女を見ると、してやったりと笑顔を浮かべていた。
「しのざきさんならこう言うと思ってました。」
 小さくウィンクしてワインに口をつける。

 まだ夜は始まったばかり……かな? 少なくともワインが残っている間は。

2300
(99/11/12)

藤ヶ崎ゆう
大神 隼人橘 美咲(「夢の勇者ナイトブレイカー」より)

「ワインをどうぞ。」
 そのソムリエールが不慣れな手つきで二人のグラスにワインを注ぐ。
「85年物のロマネ…… コンティ、でございます。
 かの…… 有名な方も美味しいと言っていたそうです。」
 ……なんか怪しくなってきた。
「ま、ワインのことなんかいいじゃないか。」
 ソムリエールの失態を「彼」はそんな風に笑ってすます。優しいのね。
 蝋燭の揺れる炎の向こうに、困ったような照れたような、そして無理矢理作ったような笑みが見えた。
「そ、それじゃあ……」
 ぎこちない手つきでワイングラスの足をつまむ。声が震えているようだ。
「き、君の瞳に……」
 言葉が途切れる。
「…………」
 沈黙の時が流れる。
「おい、橘。」
 彼はいきなり不機嫌そうな顔になると、一つの名前を口にした。呼ばれてかさっきのソムリエールがヒョイ、と顔を出す。
「どうしたの隼人くん?」
「なあ、なんで俺がこんなことをしなければならないんだ?」
「リクエストだから。」
「……じゃあ、この料理と、ロウソクと、ワインは?」
「料理はボクが。ロウソクは研究所にあった。ワインは麗華ちゃんからもらったの。『リクエストだよ』って言ったらグラスごとくれたの。」
「余計な事を……」
「どうしたの隼人くん?」
「いいからお前も座れ。それと
藤ヶ崎、お前のリクエストは残念ながら却下だ。俺にこんなことをさせるな。」
「美味しい、のかなぁ……? よく味が分からないや。」
「なにやってる橘…… って、お前なに飲んでるんだっ?!」
「ふぇ?(ほんのり顔が赤くなっている) 麗華ちゃんが『いいものだから味わって飲みなさい』って言ってたよ。」
「お前…… もう酔ってるのか?」
「ひぇんひぇん、しょんにゃことないひょ。(グビグビグビ)」
「酔っている以前に俺たちは未成年…… ってぇ、言ってる先から飲むな!」
「はひゃとくんはにょまないにょ?」
「もう意味不明だ……」
 呆れたように彼はぼやくと、ふにゃふにゃになった少女の手からグラスを奪い、まるで荷物のように少女を小脇に抱えると立ち上がった。
「悪いな。ちょっとこいつを捨ててくる。
 ……それと四回目のメモリアルおめでとう、だ。」

 そう言い残して彼は去っていった。
 あ〜あ、もうちょっとだったのに……

2200
(99/11/08)

藤ヶ崎ゆう
ジェラード=ミルビット(「銀河連合警察A級捜査官チーム・グリフォン」より)

「こちらですよ、こちら。」
 その待ち人はすでに席に着いていた。
 あらかじめこちらが来ることを伝えてあったのだろう。お冷やが二人分テーブルにおいてある。それ以外に何も置いてないところを見ると注文はまだのようだ。
「あ〜 ちょっとちょっと。」
 こっちが席に着くやいなや、手を上げウェイトレスを呼ぶ。せっかちにも見えるが、そういう風に思わせないのは何となく惚けた表情と、場所柄をわきまえていない白衣姿が飄々とした雰囲気をかもし出しているからだろうか。
 呼ばれてウェイトレスが注文を取りに来る。
「え〜と、チョコレートパフェと…… あなたはミルクティでしたっけ?」
 どうやらこちらの好みを憶えていたらしい。さて、どうしようか。
 そんなこちらの沈黙を肯定ととったのか、そのままオーダーを通してしまう。
 ……ま、いっか。
「ま、とにかく。あなたには感謝しているんですよ。」
 はて…… 分からない。何をしたと言うんだ?
「今、ちょっとばかり面倒くさい仕事に入っていたんですよ。ただ、誰かに呼ばれたとなると行かないわけにはいかないので、そのままいわゆるサボりに入ったんですよ。」
 そう言って、わざとらしく肩のあたりをトントン叩く仕種をする。
「いやはや、仕事はしたくないですねぇ。
 あ、そういえば2200ヒットをとられたそうで。おめでとうございます。」
 なんて言っている内に頼んだものがやってきた。
 ここぞとばかりに嬉しそうな笑みを浮かべ、チョコレートパフェに取りかかる。でも本当に嬉しそうだ。
「ああ、ここのパフェはみんな美味しいんですよ。生クリームもシリアルも多すぎもせず、少なすぎもせず。材料も手抜きをしてませんねぇ。これでこの値段とは正直驚きです。」
 ……そこまで言うならパフェにしておけば良かった。
「せっかくですからあなたもどうですか。記念に私が奢りますよ。」
「へぇ、美味しそうね。あたしもいいわよね?」
 ふと第三の声が現れた。まだ若い少女の声。でもその声に眼前の男がビクッと硬直した。視線を上げると彼の背後に金髪ポニーテールの少女が立っていた。
「……って言いたいところだけど、ごめんなさい。あたし達、ちょ〜っとヤボ用があって。」
 そのまま彼の白衣の襟をムンズとつかんで、無理矢理立たせる。
「さ、行くわよ。言いたいことがあるなら後でじっくり聞いてあげるわよ。」
 そのままなすがままに引きずられていく白衣男。
「なんでここが分かったんですか?」
「あんたねぇ…… 前にあたしをどうやって見つけたの?」
「ああ、そういえばそんなことが……」
 二人の声が遠くなっていく。レジで会計を済ませ(いつの間にかに明細を持っていったらしい)、そこで二、三言。
 そんな二人の姿が見えなくなって、冷めかけたミルクティに口をつけるとウェイトレスが何故かイチゴパフェを持ってきた。曰く、追加注文だそうで。
 せっかくだからもらっておく。
 忙しいんだねぇ、A級捜査官というのも。
 多分……

2121
(99/11/05)

シリウス
橘 美咲(「夢の勇者ナイトブレイカー」より)

 待ち合わせの時間は30分くらい前だったはず。
 相手が相手だからすっぽかされたということもないし、遅れるにはそれなりの理由があるのだろう。……珍しいこともあるものだ。
 ふと目の前の電光掲示板の文字に目が行った。
『列車の脱線事故。現在事故処理中。』
 臨時ニュースが流れている。ここからそう遠くない。
 ……もしかして巻き込まれたのか?
 そんなことを考えながら待っていると、はずむような足音が聞こえてきた。その方向に目を向けると小柄な少女が全速力で走ってくるところだった。
「シリウスくん、ゴメン!」
 走ってきた少女――美咲はこちらを認めるとすぐさま頭を下げた。
 よほど急いできたのだろう。息は乱れ、頬には汗が見える。走ってきただけの割には服が乱れ気味なのが気にはなったが……
 そんな視線に気付いたのか、少女はパタパタ手を振る。
「な、何でもないって。ホントホント。
 ほら…… あの、ね。その…… そう! 電車が遅れたの。電車が……
 あ! そういえば2121だったんだってね。おめでとう!」
 なんか無理矢理ごまかしたように見える。どうやら彼女はウソをつくのが苦手のようだ。というか、基本的にウソをつけないのだろう。何かあるな、とは思ったけど敢えて詮索しないことにする。
 そんなのが態度に出たのだろうか、こちらの顔を見て少女は明らかにホッとしたような表情を見せた。……なんだのだろう、一体。
 ずっと立ちっぱなしで少女を待っていたので喉が乾いていた。無論そんなことを彼女には言わなかったし、自分の分を出そうとするのを丁寧に断って、近くの自販機でジュースを買いに行く。
 ……まあ、120円で彼女の笑顔が見られるのなら安いものだ。コーラとオレンジジュースを手に、美咲が待っているベンチに戻る。ちょっと距離が近すぎたかな? と思いつつも彼女の肩が抱けるくらいの所に腰をおろす。
 片手でリングプルを開けるのも大変なので、彼女のリクエストのオレンジジュースを横に差し出す。
 ……しかし、それを受け取るような気配がない。不思議に思って振り向こうとする前に肩に重みがかかった。驚きながらもゆっくりと首を動かすと、目を閉じた少女が自分の肩に頭を乗せていた。どう見ても眠っているようだ。イタズラ心が身をもたげそうになったが、その衝動をグッと堪えた。
 動いたら起こしそうで、そのまま両手に缶を持ったまま流れる雲に視線を向ける。身体に預けられた心地よい重み。さらさらの髪から漂うほのかな香り。
 こういう日もたまにはいいかな? こうして夕方まで彼女の枕代わりをつとめていた。

 その後、寝ていたことにペコペコ頭を下げていた彼女と別れ、家に戻る。
 TVのニュースに今日の脱線事故のニュースがでていた。本当なら大惨事になるはずだったのだが、突如現れた白い巨大ロボットのお陰で死者が出なかったそうである。
 そう言えば謎の怪物が出たときもこのロボットが出てきたっけ。
 不意にさっきの少女のことを思い出した。どうしてなんだろう?
 まさか、ね……

2100
(99/11/04)

藤ヶ崎ゆう
バロン(「夢の勇者ナイトブレイカー」より)

「よぉ。」
 黒い服に同色のマントを着た男がこちらに手をあげる。
 そういえばここにいつからいたのだろう。どことも知れぬ妙な空間。ここは一体?
「ここはお前達が夢幻界と呼ぶところだ。」
 声に出してもいないのに男はそう答える。
「もっと簡単に言えば、お前の夢の中、というわけだ。おっと、無理に口に出さなくてもいいぞ。ここは精神がふれあう場所。お前のように精神世界に慣れていないものは自分の考えが外に流れてしまうのだ。」
 こっちが嫌そうな顔をしたのに気付いたのだろうか。その男はまあまあ、とこちらをなだめるような手をする。
「そうは言ったが、こちらも聞こうと思わない限り心の声は聞こえない。
 ……それにせっかくだからお前の声が聞きたいしな。」
 さらりとそんなことを言ってのけると、ちょっと気まずくなったのかコホンと咳をする。
「俺を呼んでくれたのは嬉しいが、ハヤトよりも後、と言うのがなぁ……」
 少し残念そうな、寂しそうな口調で言うが、顔は笑っている。
「ま、いいや。2000越えてからの初めてのメモリアルだな。
 ん? そう言えば2000直前のメモリアルもお前だったんだな。
 とにかくおめでとうだ。俺みたいに違う次元の住人だとなかなか会う機会もない、と思っていたが……
 その気になればいつでも夢の中で会えるんだな。」
 と、にこやかに言った直後、いきなり表情を厳しくした。
左腕を構えると叫ぶ。
「来れ闇の翼。シャドウブレイカー!」
 黒い閃光(?)のようなものが見えた瞬間、漆黒の巨大ロボットの手の上にいることに気づいた。いつの間にかこの不思議な空間の空(?)に舞いあがっていた。
 眼下に何かぼんやりしたものがうごめいていた。
「ああ、気にするな。」
 黒いロボットから同じ声が聞こえると、空いている腕を伸ばし、その手の甲から細い光線が幾条も打ち出された。
 その謎の物体は光の針が突き刺さると霧散した。
 あれは一体……?
「……精神の澱み、みたいなものか。」
 心を読んだわけではなく、雰囲気で察したのだろう。少し躊躇ったのち、口を開いた。
「沢山の人間がいろんな事を考えているんだ。澱んだり溜まったりするものがある。そういうのがたまに集まって悪さをすることがあるわけだ。」
 鋼のロボットの顔がちょっと笑ったように見えた。
「ま、よほど大きくなったらミサキ達がどうにかするんだろうが、あの程度なら俺一人でもどうとでもなる。今回はちょっとしたサービスだ。
 ……そうだ、このまま空の旅とでもしゃれこもうか。」
 こちらの返事を待たずに巨大ロボットが翼を広げた。現実世界ではないので、高度をいかに上げようとも寒くなることはない。速度が生む風が心地よかった。
 まるで夢のように……

 そこで目が覚めた。今のは夢? だけど……現実?

1900
(99/10/27)

藤ヶ崎ゆう
大神 隼人(「夢の勇者ナイトブレイカー」より)

 たったそれだけのこと。
 彼の足先が楕円を描く。その軌道の途中にニヤけた顔があっただけ。
 たったそれだけのこと。
 しかし、その結果とそれから導かれる現実を知るには幾ばくかの時間と、ホンの少しの冷静な観察力が必要だっただろう。
 不意に現れたその若者は、自分を取り囲む男たちの一人に無言で足を振り上げた。
 結果はすぐに分かる。彼の鋭い回し蹴りを受けた男はうめき声も上げるでもなく、いきなり大地と熱い抱擁をかわす。ポケットに手を入れたまま、舌打ちまでしそうなほど機嫌の悪そうな彼の動きは素人目にもただ者ではなかった。
「チッ…… 橘の悪い癖でもうつっちまったか。」
 ホントに舌打ちまでして不機嫌そうに呟く。
苛立ちまぎれに頭をかくと、彼は男たちの方を睨み付けた。
「面倒くさい話だ…… お前たちに選択肢をやる。
 一つはその倒れている馬鹿を連れて俺の前から消える。もう一つはそこら辺の隅にでも行ってガタガタ震えて許しを乞うことだ。好きな方を選べ。」
「て、てめぇ!」
 最初は言われたことを分からないようだったが、理解の色が広がると同時に怒りで顔を赤くした。先頭の男が一歩踏み出すと同時に彼がそれ以上の速度で動き出した。
「第三の選択肢、というわけか。」
 男たちは「現実」というものを知ることとなる。

「先に言っておくが、お前を助けようとしたわけじゃない。」
 まるで孤高の獣を思わせる「彼」は彼にとってつまらない作業を終わらせると、それだけを言い放ち背を向けて歩き出す。途中で何かに気付いたのだろうか、いきなり立ち止まると後ろを振り返った。
「お前もしかして…… 藤ヶ崎か?」
 こちらをそう確認すると、呆れたようなため息をつく。
「……ったく。お前も物好きだな。俺よりも愛想のいい奴はいくらでもいるだろ?
 ま、やらないでいると、うるさく言う奴がいるからな……
 いいか、一度しか言わないぞ。」
 なんか嫌そうな顔をしてから、コホンと息をつき、身体ごと正面を向く。
「1900ヒットだったな。おめでとう。
 いいか、ちゃんと言ったからな。……じゃあな。」
 今度は一度もこちらを振り返らず、歩いていく。

 その姿が見えなくなってしばらくして、遠くから「隼人く〜ん」と彼を呼ぶ女の子の声が聞こえたような気がした……

1515
(99/10/12)

毬谷 敦子
フェイクジャニスバロン(「怪盗フェイクの大冒険」「夢の勇者ナイトブレイカー」より)

「時間は!」
「銀河標準時15時ですので、あと30分以内にどうにかしないと……」
「『彼ら』は?」
「都市中心部にて敵装甲車部隊と交戦中の模様!」
(いけない。このままでは間に合わない。もしも…… もしも奇跡があるのなら誰かこの星を助けて……!)

「チッ、こっちもダメか……」
 フェイクはジャニスと一枚のチップをある施設に届けなければならなかった。もし間に合わなかったらこの星に恐るべき細菌兵器がばらまかれることになる。その発射を阻止するにはジャニスのハッキングの腕とチップが必要なのだ。
 しかし、「敵」の装甲車部隊が二人を阻み、上空ではヘリが二人を捜している。
 カッ!
 白光が闇を斬り裂く。ヘリの一機が二人を見つけたのだ。機首のチェーンガンが照準を合わせるのが見えた。
「しまった!」
「きゃあっ!」
 しかし、その弾丸は永久に発射されることは無かった。
 細い針状の光がテイルローターを貫く。墜落するヘリの向こうに闇と同じ色のロボットが見えた。
「巨大ロボット?」
「そんな! 今の技術ではあのようなロボットができるはずが……!」
『信じるか信じないかは貴様ら次第だ。だが俺は誰かに呼ばれてここにやってきた。少なくともその義理だけは果たそう。お前たちの援護をする。』
「いや、待ってくれ! そのロボットは空を飛べるな?」
『そうだ。俺のシャドウブレイカーは大空を我がものとすることができる。』
「なら彼女を、お前を呼んだ者のところに連れていってくれ。時間がないんだ。奴らは俺がここで食い止める。」
「フェイク……」
『……分かった。だが無理はするな。貴様のような男に死なれると面白くない。』
 その黒いロボットはジャニスを手に乗せると、翼を広げ飛び上がった。
 それを追おうとするヘリに、跳躍したフェイクがレーザーソードを抜いた!

「遅くなってすみません!」
 一人の少女と黒い服に同色のマントをまとった男がその部屋に入ってきた。
「時間は大丈夫? あと20分しかないわ。」
「ええ…… 解析はすんでますから、5分もあれば。」
 ジャニスは早速コンピュータに取りかかった。すっ、と気配も感じさせず、黒服の男が近づいてきた。
「貴様が…… 俺のこの場所に呼んだのか?」
「…………」
 その沈黙を肯定と見たのか、男はクルリと背を向けた。
「感謝はしておこう。面白い男と出会えたのだからな。
 お前たちはお前たちの仕事をしろ。俺は…… 俺の『仕事』をしてくる。」
 マントをひるがえし、男は去っていった。
 そして全てが終わったとき、その男は名前を語らぬ内に消えてしまった……

1500
(99/10/12)

つむぎゆう
怪盗フェイク(「怪盗フェイクの大冒険」より)

 夜の街は妙にざわめいていた。
 喧噪よりも響くサイレンの音。星の光を消してしまった街の明かりよりも眩しく見えるパトライト。何かがこの街で起きているのは明白だった。
 深夜の公園。普段ならこの時間でも愛を語らう恋人たちがいるのだが街の変化に何かを感じ、今は誰もいない。
 いや、一つの人影が色鮮やかにライトアップされた噴水の前に立っていた。
 時間を気にしているのか、手首のあたりを何度も見るような動作をしている。
 時計の針が二つ重なり、明日の訪れを静かに告げた。
 どうやら人影は誰かを待っているらしく、左右をウロウロとしきりに気にしている。
 不意に背後の噴水から物音が消えた。
 驚いて背後を振り返ると噴水の水がピタリと止まっていた。その中央に何かが……?
「生憎とこんな季節に水浴びするほど俺は健康に自信は無い。」
 再び背後から。今度は若い男の声だ。
 振り返るよりも先に風が動いて、自分の周りを照らす照明の一つに何かが飛び上がった。
「ま、こういう仕事をしているから、温かいところでコーヒーでも飲みながら、というのは勘弁してくれ。」
 その声の主はヒラリと照明のポールから噴水の中央にへ静かに舞い降りた。
 そこに屈むと何かを拾い上げた。
 一瞬目を離した隙に、「彼」はすぐ目の前に立っていた。
「ほらよ。」
 逆光で顔はよく見えないが、風になびくマントと、顔につけたバイザー、そしてあの卓越した体術が自分の求めていた人物であることを示してくれた。
「まあ、ホントのことを言えばもう少し早く渡せば良かったんだが、こっちにも色々な都合があってな……」
 ちょっと言い訳するような口調でそんなことを言う。そして手に持っていた「それ」をこちらの手に握らせた。
「とにかく、誰がなんと言おうと、これはお前の物だ。お前が実力で手に入れた物なんだから胸を張って受け取るがいい。」
 静寂をパトカーのサイレンが斬り裂いた。マントの男がつまらなそうに肩をすくめる。
「おっと、うるさい奴らがやってきた。じゃあな、俺はこれで失礼させてもらう。」
 男が身につけたマントを軽く払った。マントは風を起こし、ほこりを巻き上げた。一瞬、視界を遮られ、再び目を開いた時には彼の姿はすでに消えていた。
(つむぎゆう、って言ったな。1500ヒットおめでとう。
 それにお前のところの10000にもおめでとうと言っておこう。)

 そんな声が風にのって聞こえてきた。

1111
(99/09/27)

小次郎
橘 美咲(「夢の勇者ナ