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対決! ドリームナイツ vs チーム・グリフォン

 

「ハイパーディメンション、座標ロック。」
〈時間軸・空間軸、ともに固定。〉
「目的地再確認。」
〈21世紀地球。目標地点、当時の言語で東アジア地区・日本。〉
「よし、いっちょやってくれ。
 ハイパーディメンション!」
〈テレポート・イン!〉
 宇宙空間から一機の戦艦が消えた。

「おい。」
「なるほど、これがこちらの世界の住宅か。」
「おい。」
「ミサキ、あまり構わなくていいぞ。お前もこっちに来い。」
「おいこら、バロン!」
「どうしたハヤト。」
 掴みかからんばかりの隼人と対照的なバロン、という姿に見えるが、バロンも実のところは何か口実をつけては隼人と勝負したいのか、わざと挑発している節もある。
 お互いの視線がチラリと絡み合うと、二人同時に立ち上がる。
「……いいんですか、放っておいて。」
「大丈夫よ、」
 意気揚々と外に出ようとする二人の背中に一瞬視線を向けると、小さく肩をすくめるような動作をして、麗華はいつものように落ち着いた口調で言う。
「二人ともすぐに席に戻るわ。」
 と、反対側――キッチンの方からお盆を持った少女がやってくる。
「は〜い、お待たせ〜
 今日は大したものが無くてゴメンね。今度来たときはちゃんと用意しておくから。」
「気にしなくていいぞ、ミサキ。」
「そんな風に言うと、こいつのことだ、きっと入り浸るぞ。」
 さっきまで一触即発だったはずの隼人とバロンがいつの間にかにテーブルに戻ってきている。
「……なるほど。」
 声が聞こえた瞬間の二人の動きはまさに目にも留まらぬ、という表現がピッタリなほどだった。
 その理由も知っているから、謙治は思わずニヤリとしそうになるが、そんなことが二人にばれると掘らなくてもいい墓穴ができてしまうことを何度も経験済みなので顔には出さないようにする。
「賢明ね。」
 そう小さく麗華が呟いた。

「というわけで、今日は戦闘訓練を行いたいと思います。」
 相変わらず唐突な物言いの小鳥遊だったが、今日のは格別だった。
 美咲が焼いたクッキーをお茶請けに紅茶を楽しんでいた面々が顔を向ける。
 少年少女達の視線を一身に受けても気にした様子もなく、小鳥遊が言葉を続ける。
「チーム・グリフォンのミルビット博士がですね、一度自分たちの所のマシンと我々――ドリームナイツと手合わせがしたい、ということでして……」
「チーム・グリフォン、ってリーナちゃんのところ?」
 楽屋裏(笑)ではよく会っている美咲。
「……あの人たち、って未来世界の人じゃなかったかしら?」
「ミルビット博士相手にそういう疑問は無駄ですよ。」
「そうだったわね……」
「そろそろ時間ですね。時間にはえらく正確な人ですのでそろそろ……」
 その瞬間、150m級の宇宙戦艦が街の上空にいきなり出現した。
「来たようです。」

「今回はよろしくお願いしますよ。」
「お手柔らかに……」
「うわ、リーナちゃん久しぶり〜」
「あ、美咲さん。お久しぶりです。これつまらないものですが……」
「あら、美味しそうなケーキ。もしかして手作り?」
「そうよ、リーナちゃんのケーキは絶品よ。」
「これが噂のシルバーグリフォンですか。設計思想が全然違うんですねぇ……」
「なんだなんだ、面白そうな連中が揃ってるじゃねぇか。」
「できるな、この男……」
「俺を忘れちゃあ困るぜ。」
「まるで隙がない…… ふふふ、戦士としての血が騒ぐ……」

「ま、そんなわけで、対戦表はこちらで勝手に作りました。少なくとも一方的な結果にはならないように配慮しましたので、ご安心を。」
「ジェル…… 『面白そうな対戦にした』って素直に言えないの?」
「言えません(キッパリ)。今回はマシン同士の戦い、ということで、生身でやり合いたい方々は後で好きにやってください。必要な舞台はこちらで用意しますので。
 それではちゃっちゃと始めるとしましょうか。」

 

ROUND1:シャドウブレイカーvsファイヤーロック

「はい、アナウンサーの大神和美です。」
「同じく解説の高橋法子です。」
「今まさに戦いの火蓋が切って落とされようとしています。」
「両者とも運動性に富んだ機体。アクロバティックな戦闘が期待できるでしょう。
 同時に両者の通信もリアルタイムでお送りします。」
《わぉ、いい男〜》
『なるほど、AIは女性型か。だが、戦いでは相手が女とはいえ手加減するつもりは無いぞ。』
《くぅ〜 渋いわぁ〜 あたしのタイプかも。》
『始めるぞ。』
「その言葉を合図にスカイシャドウが動き出しました。しかし一瞬も遅れずにファイヤーロックも機動を開始します。」
「冗談めいたことを言っても、戦いになると動きが違うわね。
 ファイヤーロックはGの心配なく動けるから若干有利かもしれないけど、この戦いのポイントはバロンがシャドウブレイカーへの変形をいかに活用するかにかかってるわ。」
「お互い、相手の後ろをとろうとしますが、そうは問屋がおろしません。しかし若干スカイシャドウ不利か? 背後をとられる瞬間があります。」
「変ねぇ…… バロンの実力を考えれば、もう少し有利に進められるはずだけど……」
《大丈夫〜? もう少しで背中とっちゃうわよ。》
『そううまく行くかな? チェンジ!』
「おおっと!! 背後をとられた瞬間にシャドウブレイカーに変形。いきなり位置を入れ替えます。」
「なるほど。今までは様子見と、わざと隙を見せたのね。シャドウブレイカーの空気抵抗を利用して、オーバーシュートさせた、ってわけか。」
『これで……』
《まだまだ!》
「ファイヤーロック、いきなり下部のバーニアを全開にして水平を保ったまま急上昇。対地レーザーが下にいるシャドウブレイカーを…… あれ?」
「う〜ん、和美ちゃん残念。同じように急上昇をかけてシャドウブレイカーはファイヤーロックの真上よ。」
『チェックメイト、だな。』
《あちゃ〜 やられた〜》
『武装を見て、水平に急上昇かけるとふんで正解だったな。別な機動をされたら話は別だったが。』
《動きを先読みされた、ってことね。乙女の心を読むなんて、い・け・ず。》
『面白い勝負だった。』
《ええ。でも次は負けないわよ。》
『いつでもお相手いたしましょう、お嬢さん。』
「第一戦から白熱した試合でしたね。」
「え〜と…… 次も戦闘機対決のようね。」

 

ROUND2:フェニックスブレイカーvsサンダーロック

『よろしくお願いいたします。』
《こちらこそ。》
「二人の挨拶がすむと、二機が放たれた矢のように左右に散りました。途中で旋回をして、すれ違い様に光線の応酬です!」
「さっきとは違って、マッハの戦いね。動体視力と反射神経の戦いね。こうなると神楽崎さんの方が不利ねぇ……」
「どうしてですか?」
「ただでさえ、神楽崎さんは戦闘経験が少ないのよ。しかも相手は百戦錬磨で疲れ知らずのコンピュータ。長期戦になったら絶対不利じゃない。」
『……フルブラスト!!』
《え?!》
「あぁっと、麗華さんもそれを感じたのか、いきなりのフルブラストで相手の目を眩まし、無理矢理背後をとります。」
「あちゃー、あの機動はちょっと辛いわよ〜 相当のGがかかったんじゃないかしら。」
『もらった?!』
《まだまだです!》
「フェニックスブレイカーに背後を取られたサンダーロック!
 って…… 消えた?!」
「違う! 空戦における高等技術『木の葉返し』よ!」
『!!』
「あぁっと! 反応しきれないフェニックスブレイカーの背後にいきなりサンダーロックが舞い降りてきました! 一瞬だけ背後について…… ええっ?!」
「訓練用レーザーがエンジンに着弾したようね。いやぁ〜 凄いわ。木の葉返しをやったのも凄いけど、横向きに落下させてすれ違いざまの一瞬にエンジンを狙うとはねぇ……」
『…………(呆然)』
《あ、あの…… ごめんなさい。》
『いえ…… 謝ることはないけど…… 今の何?』
《ええ、前にヒューイさんに教わったんですけど、さすがに態勢が崩れるので一か八かでしたね。》
『コンピュータのあなたでもそういうことがあるの?』
《ええ…… さすがに瞬時の判断となると計算よりもいわゆる「勘」に頼ることになりますね。》
『ふ〜ん……』
《とはいえ、その「勘」というのもどういうものかよく分からないんですけどね。》
『そう…… せっかくだから私の訓練を手伝ってもらえます? あなたとの対戦は為になりますわ。』
《ええ、喜んで。》
「第二戦も終わりですね。」
「ま、あの二人はまだまだやるみたいだけどね。じゃ、次行きますか。」

 

ROUND3:サンダーブレイカーvsランドタイガー

「今度は重量級の対決ですね。」
「つーか、派手になりそうねぇ……」
《おうおう、さっきのひ弱そうな坊主じゃねぇか。ちっとは骨のあるとこ見せてくれよ。》
『ご希望に添えられるかどうか……(ニヤリ)』
「おおっと、いきなり轟音とともに砲弾が飛び交います。遠距離からの砲撃戦です!」
「あらぁ〜 ミルビット博士がどこからともなく調達してきた場所だけど…… あっという間にクレーターだらけね。」
「お互い、キャタピラで地面を削りながらジグザグに動いて砲弾をかわし続けています。」
「まぁ、直撃や至近弾じゃじゃなければ影響ないしねぇ。」
「バスタータンクがミサイルを発射! 四方八方からランドタイガーを襲います!」
《甘いぜ!》
「ランドタイガーもお返しとばかりにミサイルを発射します。更にレーザーターレットでミサイルを迎撃。」
「まぁ、双方とも弾数だけは豊富な機体だしね。でもそうなるとバスタータンクの方が有利かな?」
「え? そうなんですか?」
「一応、ランドタイガーは段数制限があるけど、バスタータンクは田島君の精神力がもつ限り無限に弾を撃つことができるからね。」
「なるほど……」
「ただ、あの無敵博士の設計だからね……(手元の資料を見る) 弾切れになってもヒートキャノンと大技があるのかぁ……」
『そろそろ残弾が心もとないころじゃないですか?』
《なるほど、ソイツが狙いかい。いやいや、悪くは無いな。》
『こちらも戦闘時間が長引いたんで、ちょっとは辛くなってきましたけど、まだまだ大丈夫ですよ。』
《いいねぇ……
 漢ってぇのは不利になると楽しくなる生き物でね。》
『いやいや、そちらもまだまだなんでしょ?』
《ま、それもそうだけど…… 少し派手にやりますか!》
「おおっと! いきなりランドタイガー、いきなり突進! バスタータンクに迫ります。
 対するバスタータンクはこの行動に…… え?! こちらも接近していきます!」
「ふ〜ん、遠距離から撃ち合っても埒があかないから、無理矢理勝負をつけに行ったわね。」
『バスタータンク、フォームアップ! チェンジ! サンダーブレイカーッ!!』
《パワーアーム!》
「サンダーブレイカーに変形して掴みかかろうとしますが、その腕をランドタイガーが転送させてきたアームでガッチリ掴みます。」
「というか、そういう芸当もあったわね。でも戦車に腕は反則じゃない?」
「まさに力比べ。一進一退の押し合いが続いています。」
『くっ…… サンダーブレイカーのパワーに対抗できるなんて……』
《やるじゃねぇか。俺と力比べできるなんてよ。》
「う〜ん、あの至近距離じゃあ、主砲もミサイルも撃てないわね。根競べになるかな?」
『……チェストガトリング!
《なんおぉ! ハウリングブラスト!
「あ、胸部と前部の装甲が開いて、何かしらの武器が現れました! この至近距離では避けることもできないでしょう。」
「そこまでだ! このバカタレどもが……」
「あれ? ミルビット博士……」
《博士?》
『あ……』
「ああ、ちょっとマイク返してください〜 そんなわけで、ミルビット博士の乱入で、二機の動きがピタリと止まりました。」
「で、何しに来たの?」
「……あのなぁ、サンダーブレイカーはともかく、タイガーを直すのは私だぞ。あんな至近距離で撃ち合ったら豪快に壊れるだろうが。ったく、無駄に二人とも熱くなりやがって。」
《あ、ほら、やっぱり男には勝負をつけなければならないときが……》
『……すみません、反省します。』
《あ、てめぇ! 俺がせっかく上手く言い繕うとしてだな……》
「ドロー、かな?」
「そうですね。」

 

ROUND4:ウルフブレイカーvsブラックホーネット

「これってお兄ちゃんに不利じゃない?」
「おやおや、さすがに大神君の戦いには私情が入っちゃうわね。」
「あ、いや、そういうわけじゃないんですけど……」
「大丈夫よ、特別ルールでブラックホーネットは高度限界をもうけてあるの。少なくとも一方的なことにはならないはずよ。」
「(ほっ)」
《……心配されてますね。》
『余計なお世話だ。』
《まぁ、ハンデをつけてあるんですから、アッサリ負けないでくださいよ。》
『ほざいてろ。』
「相変わらずねぇ、あんたのお兄さん……」
「あはははは……(乾いた笑い)
 おっと(真顔に戻って)、戦闘開始です。いきなり限界高度まで上げずに様子見を兼ねて、離れたところからレーザーガトリングで牽制します。」
「接近武器ばかりのウルフブレイカーだからどう攻めるかね。唯一の遠距離武器のブリザードストームは警戒されているだろうから、変形をいかに利用するかね。」
「ブラックホーネットのレーザーはウルフブレイカーにかすりもしません。」
「そうねぇ、まだビーストフォームだし…… でも逃げるだけじゃ勝てないわよ。」
「そうですね。おっと、痺れを切らしたのか、ウルフブレイカーがブラックホーネットに接近し始めます。」
「でも相手はヘリだからね。予想通り牽制しながら後退していくか。……なるほど、そういうことか。」
「え? どうしたんですか?」
『シェイプシフトッ!』
「あっと、いきなりウルフブレイカー、ウェアビーストに変形。一瞬で間合いを詰めます!」
「いくら超音速で飛べるったって、後ろ向きには無理でしょうが…… ちょっと油断したかな?」
《なんの!》
「対するブラックホーネットもイオンジェットエンジンを吹かして、超音速でウルフブレイカーとすれ違います! 距離を離してから旋回して…… あれ?」
「大神君、ウルフブレイカーを消してどうするのよ。」
「ホーネット君、尻尾見てごらん。」
「あれ、美咲お姉ちゃん……」
「おおっ! さすがに大神君の試合は気になったんでしょ?」
「そ、そういうわけじゃないけど……」
《尻尾…… テイルローターですか?
 ……ええっ?!》
「あれ……? なんか一本白い線が入ってる……」
「ふ〜ん、ちょっとVTRを見てみようかしら?
 ここで二機がすれ違って…… ちょい待ち、何よこのコマ送りにしてもかすんでしか見えない動きは。
 すれ違った瞬間にウルフブレイカーが跳び上がったようだけど……」
「うん、それで回転するテイルローターの間を縫って、表面に傷をつけたんだよ。」
《そ、それしかないよね……》
「……あんたも見えてなかったわけ?」
《そんなぁ〜 僕はこれでも一番のセンサー性能を備えているのにぃ〜
 こ、こうなったら見切るまで勝負です!》
『おいおい……』
「凄い! さすがお兄ちゃん!」
「……ていうか、やった大神君も凄いけど、なんでサキはそれが見えんのよ。」
「え……? 見えなかった?」
「ふつーは見えないって。
 ……そういやあ、こんなところでのんびりしてていいの? 次はサキの番でしょ?」
「それがね、なんでももう戦う相手がいないって。」
「へ?
 ……あ、そっかぁ。グリフォンはさすがに大きすぎるし、グレイとパンサーは基本的には戦闘用じゃないしね。はいは〜い、じゃぁ模擬戦闘訓練はここまで。」
「アナウンサーは大神和美が、」
「解説は高橋法子がお送りいたしました。」
「「バイバ〜イ。」」

 

番外編ROUND1 バロンvsヒューイ=ストリング

「さて、と。一応は手加減した方がいいのかな?」
「……本気で言ってるのか?」
 余裕の表情のヒューイと、少し怒りまじりのバロン。
「武器ありの方がいいか? 素手の方がいいか?」
 まったく気にした様子もないヒューイに、バロンは黙って腰の剣を抜いた。
「なるほど、ね。」
 ヒューイも壁際にかけられていたラックから、刃を潰した剣を手にする。
 ギンッ!
 いきなりバロンが動いて、それこそ殺すくらいの勢いで振るわれた剣を、ヒューイは片手で軽く捌く。
 続けざまに何度も振るわれる剣もヒューイの身体に触れることはない。しかも彼はその場から一歩も動いていない。
「馬鹿な……」
 一度間合いをとるバロン。顔にはうっすらと汗をかいているが、それとは別種の汗も流れている。
「ま、筋は悪くない。ただ、まだまだ若いからな。」
「な……! まだまだぁっ!」
 激昂したバロンがさっき以上の速度で接近する。バロンの方も訓練試合、ということで多少は手加減していたのだろう。これは紛れも無く本気の動きだ。
「おっと、」
 バロンの一撃を受け止めたヒューイが、その鋭さに思わず手から剣を落としてしまう。
 そこをチャンスとバロンが剣を振り上げるが……
「なんてな。」
 鋭い回し蹴りがバロンを襲った。それこそ神速の蹴りで、吹き飛ばされてから初めて気付くくらいの速さだった。
(嘘だろ……)
 蹴られた衝撃で落とした剣が床で硬い音を立てる。
「と、いうわけ。
 ファイヤーのかたき、って訳じゃないが、負け続きでも嫌なもんでね。」

 

番外編ROUND2 大神 隼人vsカイル=ミュラー

「さて、と。」
 グシグシと柔軟運動をするカイル。隼人はすでにウォームアップは済ませてあるのか、腕を組んでそれを見ている。
「じゃ、ボチボチ始めますか。」
 パンと、手を叩くと仁王立ちになって隼人を挑発するように手招きをする。
 さっきの試合を見ていたので、迂闊には攻め込まない。身体が大きいから鈍重だろう、という考えは捨てる。
 まずは様子見も兼ねて、低い位置への蹴り。
 バシッ!
 思わず引いてしまう隼人。まるで大木か石を蹴ったかのような感触だ。
(なんていう筋肉だ……)
 見た感じ、さほど力を入れている様子もない。それなのに筋肉の鎧は隼人の蹴りを苦も無く弾き返したのだ。
「チッ……」
「ん? どうした? それっぽっちか? もう少し俺を楽しませてくれよ、」
 カイルの挑発にも乗らず、ジッと相手の様子を観察。ただ立っているようにも見えるが、まるで隙が無い。というか、多少の打撃で切り崩せそうな箇所が見つからない。まさに筋肉の要塞、という感じだ。
「…………」
 ヒュッ、と風を切る音だけを発し、隼人が動く。
 とりあえず連続攻撃で相手の動きを封じならがら、付け入る隙を探してみる。
(飛閃龍墜脚は使えないしな……)
 少なくとも投げ飛ばせるような相手で無いと使えない。
 カイルはその攻撃を甘んじて受けているようにも見えるが、その鋼の筋肉の前にはほとんど効いてないようだ。
(なんてヤツだ……)
 いい加減、本気で攻撃しているのだが、こっちの手足の方が痛くなってくる。
(しかたねぇ……)
 左右に攻撃を散らせ、腹部のガードをこじ開ける。たとえ腹筋を鍛えてあるとはいえ……
「ハァッ!!」
 掌底に気を加えて叩き込む。筋肉の鎧があろうが、ガードしていようが、衝撃が抜けるためにただではすまないはずだ。
「ウォッ!」
 初めて大男が苦痛らしき声を出した。でも軽い。
 衝撃で一歩だけ下がったものの、平気な顔してまた構える。
「なかなか効いたが、まだまだだな。で、どうする? 俺の勝ちってことでいいか。」
「……ああ、俺の負けだ。」
 さすがに手詰まりになった隼人が敗北を認めた。

 

番外編ROUND3 橘 美咲vsアイリーナ=コーシャルダン

(視点:ラシェル)
「美咲さん…… あなたと勝負するのは初めてですね。」
 二人の背後で炎が燃え上がる。
「うん、そうだね。でもボクは負けるわけにはいかないんだよ。」
 二人の手の中の「得物」がキラリと鈍い光を放つ。
 頬杖つきながら、二人の「勝負」の行方を見守る。
「じゃ、あ〜れ、きゅぃじーぬ!」
 あたしの声で二人が動き出す。包丁が材料を切り分け、火にかかった鍋が湯気をあげる。
 ……まぁ、簡単に言えば料理勝負だ。料理の鉄人が二人も出てきているんだ。そーゆー勝負だってあってもおかしくない。この二人の格闘勝負、というのも見たいといえば見たいが……
 一時間後。
「それまで!」
 終了の合図で二人の手が止まる。
 ここにいる全員の空腹を満たすのだから、テーブルの上からはみ出しそうである。
 しかも、成長期の若者(笑)や無駄に世界の食糧危機に貢献しそうな奴らもいる。きっとこれだけの料理も、不思議な物理法則の後に全て平らげられてしまうのだろう。
『いただきます!』
 さ〜て、ブラックホールに吸い込まれない内に、審査審査♪
 なるほどなるほど、美咲ちゃんは和食系で、リーナちゃんは洋食系ね。見た目からして食欲を刺激してくれる。リーナちゃんの料理は食べ慣れているから、美咲ちゃんの方を先に……
 ヒョイ、パク。
 お、美味しい…… と言うか、すごい安心できる味。まさに家庭料理ね。毎日毎日食べても飽きないような……
 いや、ホントに。これならいいお嫁さんになれるわね。
「ふむ。やや荒削りなところはあるけど、これは時間をかけないためかな? ま、実際に家庭での料理を考えると時間をかけすぎるのも良くないですしね。更にいえば、それで味が落ちているわけでも無し、文句の付け所はありませんな。」
 とジェル。
「大してリーナの方は、まぁある意味完璧だけど、最良ではない、というところかな? 知識も豊富だし、技術もある。しかし、経験が少ないため──ま、こればかりはしょうがないけどな──どうしても教科書通りの作り方になってしまうこともある。
 とはいえ、二人揃って料理の腕は見事の一言だ。頑張らないとアラの一つも見つからない。」
 ほぉ。基本的にジェルはお世辞が嫌いな上に、人をなかなか褒めるようなことはしない。だからこそ言うのは心からの絶賛だけだったりする。
「ま、」
 とジェルの意味ありげな視線が隼人君とヒューイに向けられる。
「ただ料理というのは『誰の為に作るか』が一番大事であり、そういう意味では二人とも100点満点ですな。」
 ニヤリ、と口の端を軽く歪めるという、いつもの人を不安にさせる笑みを浮かべる。
 なるほど、ね。
 ジェルに言われて、その話題の二人が「うっ……」と言葉に詰まる。食べなれているせいか、それともそっちの味の方が好みなのか、同じ側の料理にしか手をつけてない。
 で、そんでもって、その様子に目を細めた小鳥遊さんがポツリと口を開く。
「いやいや、お二人ともいつでもお嫁さんに行けますね。」
「ふぇ?」
「あ……」
 面白いように二人がボッと赤くなる。エプロンで顔を隠すしぐさがまた男心を刺激するんだろうなあ。残念なことにあたしには似合いそうに無い。つーか、見せつける相手も……いない、はず、だけど…… 大体、あたし料理苦手でしょうが。
 カァァァァァッと赤くなって、少し潤んだ瞳でお相手(笑)を見ると、決まり悪くなったようにそっぽを向いたり、頭をかいて誤魔化そうとする。ま、そんな視線だけラブコメの間にも、カイルはモグモグとご飯を食べているんだな、これが。
「なんか僕たち、影が薄いですね。」
「……止めときなさい。今あの空気に混ざりこんだら負けよ。」
「まだまだだな、ハヤト……」
 なんか向こうの方で喋っているな、うん。

 まぁ、食事も済み、デザートもいただいた後、お開きということになった。
 結果は三勝二敗二引き分けでチーム・グリフォンの勝ち、ということになっているけど…… メカ戦じゃ負けてるわね。
「……でもあんた何かした?」
 と、隣の白衣男に聞いてみる。コイツはただ言いたい放題していただけのような気もするが。
「ラシェルだって何かしましたか? 私はいいんです。一応この世界の最強キャラ、ってことになってますから。」
 はぁ、そうですか。それにあたしもいいのよ。特に取り得もないし……
「そうですねぇ、ボケツッコミ勝負でもあればよかったんですがね。」
 ニヤリ。
 つーか、人の心読むな。
 と、不意に小鳥遊さんが緊張の面持ちで声を上げた。
「大変です! 夢魔が現れました!」
 おっと、大変。ここはドリームナイツの出番?
「……グリフォン。第一級命令(ファーストクラスコマンド)、ギガ・ストーム・ブラスター準備(セットレディ)。」
《了解!》
 と、空間の隙間に隠れていた(隠れるなよ)グリフォンが不意に上空に現れると、機体下部のレール状のパーツを展開する。その機首が街の上空に現れた巨大な飛行物体の方に向く。
「ギガ・ストーム・ブラスター収束モード。出力は1%もあればいい。」
 出動しようとする美咲ちゃんたちを手で制して、淡々と指示を飛ばすジェル。
 機首にある砲門が開き、レールに何かしらのエネルギーが満ちてくる。
「第一級命令、ギガ・ストーム・ブラスター発射(ファイヤ)!」
 一瞬の閃光が街を包み込んだ。
 光が消えると夢魔も消えていた。
『…………』
 皆の様々な感情の混じった視線を全身に浴びて、この無駄に最強の変態科学者はヒョイと肩をすくめた。
「ほらね。」
 なにが「ほらね。」だか……
「私も科学者としては、他の歴史や物語に干渉してはいけないのですよ。」
 今思いっきり干渉したやん。
「あ……
 まぁ、そーゆーこともあるということで……」
 コホン、と咳払いをすると、空に向かって合図をする。
 そうするとグリフォンがゆっくり降下してきた。
 ホントに帰る時間になったようだ。ちょっと名残惜しい。
「また機会があったら来ますよ。先程も言ったように、皆さんの戦いに加勢はできませんが……」

「それでは。」
「またこういうことをやりましょう。」
「来るときは言ってね。御馳走用意して待ってるから。」
「楽しみにしてます。」
「いつでもいらして下さい。歓迎いたしますわ。」
「今度はあたしも何かしたいわね。」
「面白かったぜ。」
「たいへん為になりました。」
「次までに腕を磨いておけよ。」
「今度は負けないぜ。」
「俺もまだまだ修練が足りないな……」
「皆さんまた来て下さいね。」

「ハイパーディメンション、座標ロック。」
〈時間軸・空間軸、ともに固定。〉
「目的地再確認。」
〈元の時代に戻ります。〉
「はいよ。
 ハイパーディメンション!」
〈テレポート・イン!〉
 そしてもう一度、宇宙空間から一機の戦艦が消えた。