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隼人くん暴走(笑)SS「雨の日の……」

 

 ザザー
 隼人は窓の外を見た。叩きつけるような大雨が降り続いている。
 さっきまでは小降りだったのだが、今は音もやかましいくらいまでになっている。
 妹の和美は今日は検査入院で明日まで戻ってこない。
 和美が退院してから久しぶりの一人で家にいることになる。
 ピンポーン……
 玄関からチャイムの音。いつもならパタパタと和美が行くところだが、いないので仕方なく立ち上がる。
「誰だ?」
 と、いつもの無愛想&無造作に玄関のドアを開けるとそこには水も滴るような美女…… ではなく、頭の先からつま先まで濡れ鼠になっていた美咲が情けなさそうな顔で立っていた。
 ……一文字加えたら間違いでもなかったようだ。問題は比喩でもなく水が滴っていたことだが。

「ふぇ〜」
「とりあえず頭拭け。」
 奥からバスタオルを持ってきてバサッ放り投げる。バスタオルの下から手が生えてきて、もそもそと頭を拭う。
「で、どうした?」
「うん……」
 濡れたまま目を伏せる美咲。良く見ると手には買い物袋を持っている。
「あのね、今日和美ちゃん、いないんでしょ?」
「ああ。」
「だからね、ちゃんとご飯食べてるかなぁ〜? って見に来ようと思ったら……」
「途中で雨に降られて、傘も持ってなくてうちに転がり込んできたわけか?」
「うん…… ゴメンね。」
「阿呆、謝ることか。」
 ぽんぽんとバスタオル越しに頭を軽く叩く。
「……とにかく、濡れたままだったら風邪引くからシャワーでも浴びてろ」
「うん。」

 シャー……
 雨音も外から聞こえてくるが、家の中からも似たような音が聞こえてくる。
 夕刊を読んでいたが、内容は全く頭に入ってなかった。水音が気になって仕方がない。
 こういうときに耳がいいのも考えものである。耳を澄ませば美咲の鼻歌まで聞こえてきそうだ。
 と、さっきまで少女が持っていた買い物袋を見る。本人に比べ、あまり濡れていない。おそらくは雨からかばっている内にあれだけのびしょ濡れになったのだろう。
 中からの水音が止まった。ドアが開いて、ゴソゴソと物音が聞こえる。
「ねぇ、隼人くん? 何か着替えある?」
 美咲が脱衣所から上半身を出す。ちなみに体はバスタオルに包まれている。
 ……絶句。見た光景の衝撃に隼人は固まっていた。なんとか回復する。
 そりゃそうだ。濡れた服を着ては本末転倒だ。しかも乾燥機もないので乾くのにも時間がかかる。その間バスタオルだけでは健全な男子の隼人には拷問に等しいだろう。しかもこの作者だ、必ず何かしらの嬉し恥ずかしなハプニングが起きるに違いない。
「……ちょっと待て。」
 と言ってから考える。和美は美咲と身長がほとんど同じだ。和美がいれば何も問題がないのだろうが、今日はいない。まあ、それだから美咲が来たのだが。
 更に言えば、妹とはいえ女の子のタンスを物色する趣味もない。というか、もっと子供の頃ならともかく、そろそろ和美の部屋に入るのも躊躇われる。いない時ならなおさらだ。運悪く、干してある手ごろなものもない。
「…………」
 しばらく考えて、美咲本人に和美の服を選ばせればいいことに気付いて、戻ろうとして……

「あ、隼人くん、今からご飯作るから、ちょっと待っててね。」
「……!」
 美咲が干してあった隼人のワイシャツを着て、その上から和美のいつも使っているエプロンをつけていた。体格の差か、ワイシャツの下は膝くらいまで来ている。
「? どうかしたの?」
 いつものように不思議そうに首を傾げる美咲。
 この姿も健全な男子には辛かったりする。
「い、いや…… なんでもない……」
(大丈夫か俺……)
 すーはーすーはー深呼吸をし、夕飯を待つことにした。

「お前ほんとに料理上手いな……」
「えへへへへ……」
 食事に集中して、差し向かいにいるワイシャツ+エプロンの少女のことを頭から追い出す。
 無邪気に笑う少女。でも今の服装はそれこそ「漢の浪漫」(爆)というべき服装だ。
 長いのか短いのか分からない食事の時間が終わる。
 と、美咲は食器を抱えて台所に戻っていった。すぐに水音とカチャカチャ食器が触れ合う音、それに楽しそうな鼻歌が聞こえてきた。
 別段普通の光景。妹の和美も毎日同じことをしている。
 しかしどうしてか隼人は自分の緊張が高まるのを感じていた。あの少女だからか、それともワイシャツの魔力(笑)なのか。
 なにか気まずさを誤魔化そうとさっきも形だけ読んでいた夕刊を拾い上げる。全く内容が頭に入らない。というか、文字が文字として認識できない。
(なんなんだ、この感じは……?)
「あれ? 隼人くん、新聞逆さまだよ。」
 と、紙越しに声が聞こえてきた。わずかに新聞を下げるとその上から美咲がヒョイと顔を出す。そして彼の持っている新聞を覗き込むようにして見る。
「……やっぱり逆さまだよ。それじゃ読めないよ。」
 顔を上げる少女。
 さっきまでのエプロンは脱いでいる。と、サイズの関係か、緩い喉元から、その…… いわゆる色々なものが見え……
…………!!!!
 ……ないのだ。
 声を出さずに思わず仰け反る隼人。新聞を持ったままいきなり下がったので、新聞を覗き込んでいた美咲にも同じような運動のベクトルがかかる。
 いつもの(笑)反射的行動か、倒れこむ少女を両手で支える。というか、二人の位置関係から抱きとめるような形になる。
 洗い立ての髪の香りが鼻腔をくすぐる。
 わずかに立ち上るのは石鹸の芳香だろうか。この少女には素朴な石鹸の香りがよく似合う。
(……いや、そうじゃなくて。)
 と意識を元に戻そうとする。すると、ワイシャツの背中に下着のラインが見えないことに気付く。それこそ上も下も。
 まあ、アレだけびしょぬれだったのだ。分からないでもない。
………………!!!!!!
 隼人の理性はまさに陥落寸前だった。
(またか! またこのオチなのか作者!)
「美咲!」
「きゃっ。」
 強く胸元に引き寄せると、少女らしからぬ、それでいて女の子のような悲鳴をあげた。それが最後の理性の糸を断ち切った。
み、みさきぃぃぃぃぃぃ!!!
 がばちょ。
 これ以降、未成年には不適切な表現があります。(爆)

 ……またこのオチか。