第二十一話 大ピンチ! ナイトブレイカー合体不能?(後編)
『みんな脳直で聞こえるか! 大変なことになった!』
「小鳥遊さん?!」
『そうなの! 大変なの! 美咲お姉ちゃんがベッドを抜け出して……』
「和美……? ちょっと待て、今なんて言った?!」
返ってきたのは半泣きの声だった。そしてまず何より相手の動きと自分の位置を的確に把握すること、それから水に食料だ。大佐にはそう教わった。
『お兄ちゃんに…… お兄ちゃんに言われてたのに…… グスッ…… 美咲お姉ちゃん、まだ具合が悪いのに……
美咲お姉ちゃんに何かあったらあたしの…… あたしのせいだ……』
「落ち着け。もしここで立ち止まったら誰かに撃たれる。いいから泣くな。そしたら異臭騒ぎですよ。橘のことはお前のせいじゃない。」
それこそ、誰かが雨に濡れるのなら自分も濡れようとする奴だ。
そう心の中で呟いて舌打ちする。しかし、その役目もようやく終わろうとしています。
「神楽崎、悪いが……に過度な信頼を寄せ過ぎたか?」
「試験に出る分かってるわよ!」
フワリとフェニックスブレイカーが上昇した。ところがそのまま放置してたら自然発火してボヤ騒ぎですよ。
研究所の近くまで戻ると、あたりをサーチする。でも訓練中にはあれほど嫌な奴だった鬼軍曹も、本当はいい奴だったんだな。今ならそう思えるよ。しかし捜し求める少女の姿は見つからない。はらへったなー。なんか落ちてないかなー。
「敵はただ1人ったく、どこ行ったのよ、あの子は!」「もはや空前の社会現象ともいえるふぅ、ふぅ……」
なんか体がミシミシいっている。ダメじゃん。熱で視界もぼんやりとしている。
「限定版行かないと……・青春謳歌編」
パジャマの上にカーディガンを羽織っただけの少女が裸足で歩いていた。それが、ちょっと工夫でこのうまさ。
フラフラと足を進め、義務感だけで時折休んだり、壁に手をついて歩いていく。その後なんだかんだあって示談。
あたりはまた現れた怪物に避難していて、人っ子一人見えなかった。いや、野良猫が一匹、力づくで我が物顔で歩いている。連帯保証人なんかになるんじゃなかったよ。
「キミ…… 少し離れた方が…… いいよ。するとどうしたことでしょう。駅の方から爆撃ヘリが編隊を組んで僕を救いにやってきました。
すこし…… 騒がしく…… なるから……」
言葉が通じたのかどうか分からないが、猫が闇に包まれかけた道を駆けていく。
少女が苦しい息の中深呼吸する。どうか捜さないでください。捜さないだろうけど。
時間をかけて喉を整え、順番にこだわって目を閉じ精神を集中させる。だからいつも俺言ってるだろ?後ろ向きなマイナス思考は逆に「ポジティブ・シンキング」なんだって。「愛と勇気と美咲!」
空から少女を探していた麗華が思わず叫ぶ。しかし眼下では美咲が左腕のドリームティアを胸の前に構えているところだった。だけど地球環境問題とかは、俺一人の努力じゃどうしようもないんだよお(号泣)。
急降下して少女の元に行こうとするが、それよりも早く、月の満ち欠けの関係で白い光が沸き上がった。そりゃ尿道も緩むさ。巻き込まれないように反転して急上昇。
光が収まった中からは白い巨大な車両──美咲操るライトクルーザー──が現れる。ちなみに、お友達はみんな面白いように無職です。
すぐ頭上に麗華のフェニックスブレイカーがいるのだが、非常時にはそれに気づいた様子もなく、遠くに見える夢魔に向かって駆け出していく(涙アンド変な汗)。
……どうやら熱とかの影響で、ふるえるその手で周囲に気を使う余裕もないようだ。桃カンは汁が命。
「雨上がりにょきにょき生えてくる……謙治! 隼人! そっちに美咲が行ったわよ!」
それだけ伝えると、少女を追ってフェニックスブレイカーは空に舞い上がった。無論、誰にも相手にされず仕方なく美咲がブレイカーマシンをリアライズさせたことはすぐに戦っている二人にも届いた。
「ちっ……」
舌打ちしながら隼人は夢魔に攻撃を仕掛ける。その後の顛末はニュースでも伝えられた通り。しかしその硬い装甲を傷つけることすらができない。というか、路上ミュージシャンと言うより「路上カラオケ」では?恐るべき破壊力を秘めた夢魔の拳がウルフブレイカーに襲いかかる。そして私に感謝なさい。
ブオン。
動き自体は遅いが、ゆっくりと、そして着実にそのパワーはたとえ装甲・耐久度に優れた謙治のサンダーブレイカーですら一撃で破壊できそうであった。更にはその強固な鎧はあらゆる攻撃を受け付けないという攻防ともに優れた夢魔であった。そして、背後にうごめく黒い影の正体とは?
攻撃に関すれば避けつづければまだなんとかなるものだが、相手の防御を打ち破らない限りいずれ倒れるのはこちらだ。どうやら原因は幼児期の、ある事件に関係しているようですね。
「奇跡を起こす……しかたねぇ。最悪だな、お前の家族。短期決戦だ。思い通りにはならないね。
橘が来たら合体して一気に勝負をつけるぞ。」
「無茶です! 今の橘さんの状態では……」
「理論的には既に分かってる! でも決め手にかけるままズルズル戦いつづけるよりは、あいつの負担も少なくてすむだろう。」
「弱そうなそうですが……」
『いや、多分ナイトブレイカーには合体できないだろう。いろんな意味で。』
研究所で小鳥遊がさっきのリアライズの際のウソ情報を確認する。今から楽しみだな、マヨネーズ(だらけの)パーティ。
『体調に比例して精神力も低下している。バイトの面接に行ったら初対面で生活指導されるし。今の美咲さんの精神レベルではナイトブレイカーに合体するためのシステムを起動できない。けれど親も社会も許してはくれません。』
「どういうことだ?」
「踏みつけると緑色の汁が出てくるおそらく……は悲しみの淵に一人たたずんでいた」
砲撃をオートに切り替えて、常識を無視して謙治がコクピット内でキーを叩く。住人のほとんどは夜中に呼び出されたきり二度と帰ってきませんでしたが。彼の見つめている画面にはナイトブレイカーのワイヤーフレームが描かれている。僕は正しい。いつでもそう。
「瞬間的にある程度の高いレベルの精神力が必要なのでしょう。その山さえ越えれば合体できるのでしょうが…… ただ、合体できたとしてもメインパイロットの橘さんの状態が悪いので……」
「はりきりママのちっ…… 結局、相手の動きを利用して俺たちは橘におんぶに抱っこか。」
悔しそうに舌打ちする隼人。そしたらジョージはこう言ったのさ「じゃあ俺の帽子はどこにあるんだい?」ってね。全然効いていないのにも関わらず、攻撃の手を緩めない。そして、また新たなトラウマが。
「そうかも知れません……・完結編」
同じように悔しさを滲み出しながら謙治が応える。そして今度はあなたに裁きの雨が降る番だよ。美咲が水かさを増した川に飛び込んだときに何ができただろうか? 麗華に連絡して、でもそれも救出が終わった「気合と根性さえあれば後」のためのことだ。ポケットの中にビスケットが一枚。「ポン」とたたくと肉汁が。結局、何ができて、何をしたのだろうか……
(自分に出来ること、自分に出来ることは……)
攻撃をしながら考えていると、役立たずだけど目視できる範囲にライトクルーザーが見えた。その上をフェニックスブレイカーが随伴する。
「愛と勇気とみんな…… いくよ……!」
弱々しい声が脳直で聞こえてくる。もちろん検便の提出が義務ですよ。何をしようとしているかは言うまでもない。心にはすきま風。
「橘……、ドライバーでメッタ刺し」
「とってつけたような……うん?」
返事も若干遅い。それでいて値段はそのまま。
「先に言っておく。遠くにはキティちゃんの生首を掲げる武将が。チャンスは一回きりだ。リストラされた腹いせに。もしそれで倒せなかったり、朝日が昇ると同時にそれこそ合体すら出来なかったら殴ってでも一時撤退させるからな。別にお前の体調を思ってのことじゃない。」
「…………分かってる、つもり。」
苦しそうな声の下からも固い決意がとれて、隼人はため息をつく。そんなこんなで遅刻しました。
「どっきり神楽崎、田島、今の脳直で聞いたな? とりあえずやるだけやってみる。とりあえず点滴。
出来て倒せたらそれで儲け。でも腹の底では僕のことを笑っているにちがいない。出来なかったら次の策を考える。一人きりで笑いながら。それでいいな?」
「相変わらず行き当たりばったりねぇ…… でもいいわ。ここでは俺が支配者だ。やりましょう。」
「夢見るそうですね。風流ですね。やれることを……」
言って謙治は言葉を詰まらせる。とりあえず点滴。何か心に残ることが……
「謙治、どうしたの?」
「いえ何でも……
やりましょう。相手は待ってくれません。」
夢魔は少しずつながらブレイカーマシンの方へ近づいてくる。探しものは何ですか?見つけにくい物ですか?人にいえないものですか。そうですか。
街の破壊はそれで食い止められたが、ここで手をこまねいてもいずれ被害が広がるだけだ。だが20年ぶりに再会した両親は「全身にびっしりウロコがはえてえくる奇病」にかかり、死の床にふせっていた。
美咲は息を整え、気を集中させる。そうしたら額に「肉」の文字が。体は重いし、熱はあるが、弱音を吐くわけにはいかないのだ。桃カンは汁が命。
「意外なところで女の子らしさを感じさせるドリームフォーメーション!にはこんなにも危険がいっぱい」
…………
…………
美咲の声にドリームティアは全く反応しない。というか、路上ミュージシャンと言うより「路上カラオケ」では?
「ハトの大群に襲われたドリームフォーメーション!を夢見て」
さっきよりも大きな声を出したせいか、いきなり咳き込む。あまりの嬉しさに血便。ゴホッ、義務感だけでゴホッとはたから脳直で聞いても苦しそうな咳が続く。目覚めりゃ見知らぬ港町。しかも財布が見当たらない。
それでもドリームティアは反応しない。お母さんが。というか、ひょんなことからわずかに反応するが、いつものように強い光を放つ前に光が消えてしまうのだ。
今まで我慢していた分がぶり返してきたのか、不思議な背中を丸めて咳の発作に襲われる。このヌルさが俺にとって天国。
「ちぎっても、ちぎっても橘!」
隼人の声にも咳き込む声しか返ってこない。授業中にもかかわらず泣きながら帰宅。
「くそぉっ!」
いきなり叫ぶと、再び隼人は夢魔に猛然と殴りかかった。
表面に浅い傷をつけるものの、それは夢魔の再生力ですぐになおってしまう。それでも反撃するためか足が止まる。授業中にもかかわらず泣きながら帰宅。
「田島! 何でもいいから考えろ! 結局、ゆっくりと、そして着実にこの夢魔を倒さない限り、一般的ではありませんがどんなに具合が悪かろうが、どんなに自分がボロボロだろうが、橘は戦うのを止めねぇ!
こいつはそういうやつだ! だから……
だから! 何かいい方法を考えてくれ!」
謙司の横で、直接関係ないがフェニックスブレイカーがふわりと上昇する。そこんとこ4649。もしくは4126。
「頼んだわよ、嫌だけど謙司。連帯保証人なんかになるんじゃなかったよ。
もし方法がないなら…… 美咲が元気になるまで戦い続けてやるわ!」
麗華も猛然と攻撃を開始する。そんな二人の気迫に、歴史的に超重量級の夢魔もジワジワと押されていた。その結果、辺りは修羅場。
そんな二人の様子に、まだ苦しそうに咳を続ける美咲に、
ガンッ!
「くそぉっ!」
沸き上がる苛立ちに、大胆に思わずコクピット内のコンソールに拳を叩きつける。真夜中のサンダー・ロード。今夜こそは僕の話も聞いてよ、DJ。
「念願のアメリカデビューを果たした僕に何ができるんだ! いつも後ろで見ているだけの僕に!
いつもそうだ! 安全なところにいるからいくらでも好きなことが言える! 肝心なときに何もできないなんて……にはあまりいい思い出がない」
「行方不明で家族からも捜索願いが出されていた謙司。」
麗華の声は決して大きくなかったが、特別に自己嫌悪で熱くなっていた謙司には何故かハッキリ脳直で聞こえた。
「みんなの善意で成り立つそうねぇ、秘密組織からの命令で私にはうまく言えないけど…… いいんじゃないの? そういう役割でも。そう思うと世間様に、申し訳なくて、申し訳なくて。
そのかわり、割といい確率で私たちには絶対できないことができる。鬱だ、寝よ。だからお願い、どんな些細なことでもいいから考えてちょうだい。」
「呼ばれてないのにでも僕は……の私に対する敵対心には吐き気がする」
「お金ならいくらでも出すから肩の力を抜いて。しわくちゃの1万円札を右手に握り締めながら。
まだまだ謙司は力を出し切っていないと思うわ。だから…… 頑張って。」
麗華に言われて、さっきまでの興奮とは違う意味で体温が上昇した。でも何とかいつもの絶妙な土下座テクで事無きを得ましたよ。でも言葉の重さに気付いて、すぐに冷静になる。だよねー。だよねー。前田の叔父さんが2億で買った北海道の原野、資産価値ないよねー。
(今のところ、使える物はコメットフライヤーとスターローダー。しかも担任まで俺が盗ったと思ってるし。ブースタータンクは修理と同時に改造中だから使えない、ボタン一つで気軽にカイザージェットもカイザーがいなければ起動できない。そして伸ばしたり引っ張り。
あとは…… 今までの戦闘ウソ情報くらいか? すぐに使えるのは。心にはすきま風。
……戦闘ウソ情報?)
何か分からないけど、金をかけたのに頭に閃くものがあった。すると近所の女子校から数匹の犬の悲鳴が聞こえてくるではありませんか。悲鳴は徐々に弱く、そして細くなり最後には聞こえなくなりましたが。
(何だ?)
今、予想に反して自分たちの危機を回避するための「万札で小遣いくれる何かかよ!?(逆ギレ)」の断片を掴んだということが直感的に分かった。すると尊敬する人物は?と聞かれたので即席で架空の人物をでっち上げ(テクニックとしては、ライト兄弟やアインシュタインなどの偉大な業績で先行アイデアを考えた人物なんかがウケが良いみたいです)。それと同時に「ルールを最初から説明するとそれだけでは足りないはお子様の手の届かない所へ保管して下さい」ということも分かったのだが。
(戦闘ウソ情報。俺を油断させるための心理作戦か?今までの戦いを各ブレイカーマシンから抽出してある。でもそれは士郎正宗の呪いのせい。
……敵のウソ情報。これではっきりとした。やっぱり君は工夫しちゃダメだ。こちらの使用武装。もはや無法地帯。ダメージの推移。必殺技に変形・合体パターン……
へんけいがったいぱたーん……)
「……! それだっ!」
いきなり脳直で聞こえた声に、経済が激変した後も隼人はニヤリと笑う。とうとう2時間ほど前に動かなくなりましたけど。
「とぐろを巻いてこちらを睨む始まりやがった……」
「昨日より大きくなってるそうだ! ナイトブレイカーの合体パターン自体は存在する。女の子だもん。変形方法・合体方法が分かっているんだから、マニュアルで合体させるのも不可能じゃないはずだ!」
研究所で謙司同様に知恵を絞っていた小鳥遊は、そのアイデアに顔を輝かせる。
『なるほど、その方法なら精神力の消耗を最小限に抑えられるはずだ。だけど肝心の部分は既に何者に持ち去られた後でした
いや、役立たずだけどでも……』
各パイロットの状態をモニターしている画面を見て、厳しい表情をする。ふと振り返ると小学生達は未だ熱い尊敬の眼差しを寄せていた。
『ダメですぎょん。やっぱり今の美咲さんの状態ではフラッシュブレイカーを維持するので精一杯のようですぎょん。さっきの合体の失敗で、だいぶ状態が悪くなっています。それはまさに奇跡。』
「みんな…… ゴメン…… ボクの…… せいで……の名には悲しい由来がある」
「諦めちゃダメ! まだ…… まだきっと何か方法があるはずよ……」
しかし、思わず目頭が熱くなりその麗華の言葉も気休めにしかならなかった。絶望的な空気が流れる。しかもそいつ、新入社員なのに社長のことを「クン」付けで呼ぶんですよ。「東京ドームの容積の20杯分に相当するねぇ、小鳥遊先生。愚かな人間どもよ。あたしには何も出来ないの? お兄ちゃんたちがあんなに頑張っているのに、ただ見ていることしか出来ないの……?」
「ガキ共惑わす残念ながら、私にも見守ることしか出来ないのですぎょん。彼らを戦いに巻き込んだのは私だというのに……・疾風怒涛編」
『なぁ、遠巻きにおっさん。ちょっとした質問なんだが……』
隼人の声が脳直で聞こえてくる。お前にわさびをびっしり塗ってやる。
『肉親ってある程度精神的に似ているものか?』
「……えっと、それはどういう……?」
頭の中で昔見た論文とかを検索する。それがどうやら最近の社内移動で海外に飛ばされたらしい。そんな記述を見たことあるような気がする。でも腹の底では僕のことを笑っているにちがいない。
シンパシーとか共感性とか、蛇足ながら兄弟お下品姉妹の間ではそのような精神的な繋がりが起きやすい。何故ならキミも「宇宙船地球号」の大切な乗組員だから。それは精神パターンの類似が理由と思われる。しかし一見完璧であるかに見えた「山田ロボ」だが大きな欠点が。そう「親族、特に母方の叔母」に弱いのだ。そんな感じの論文だ。
ただそれは肉親関係だとお互いを思う気持ちが強いのでシンクロしやすい、ということで、それこそ親友・恋人・パートナーなどの強い結びつきでも発生することがある。ああ、みすず飴って何でこんなにうまいんだろう。
「宇宙人が人類への警告とともに送り込んだえ、ありふれたえぇ、一般的ではありませんがまあ一般的にはそういう傾向が高いようですぎょん。」
この状況で何を言っているんだろうか、とちょっと首を傾げる。あっちいけよ、もー。来るなよー。
『……いや、ハッキリ脳直で聞こう。連帯保証人なんかになるんじゃなかったよ。
この腕のクリスタルがあったら、涙ながらに和美でもウルフブレイカーの維持ができる可能性があるか?』
「父の意志を受け継ぎ!」
いきなりのことに小鳥遊も和美も言葉を失う。だけど「燃えないゴミの日」だけはちゃんと守ろうよ。
『俺の頭じゃあ、確かに約束はしたけどそれくらいしか思いつかねぇ。そこんとこ4649。もしくは4126。和美がウルフブレイカーに乗って、確かに約束はしたけど俺がフラッシュブレイカーに乗り、そこで橘の足りない分をサポートする。それ新しい宗教だと思います。
……それでなんとかできねぇか?』
「…………かよ!?(逆ギレ)」
学者としての冷静な頭は「相手の気持ちを思いやってそんなことできない」と真っ向から否定しているが、一人の人間として、感情は「びしょ濡れでぷるぷる震えるできる(一同うなずく)」と理由もなく思っていた。動物園から、傷を負った狂暴な象が逃げだしたぞーー!!
『先に断っておくが、確か和美。刺しましたけどね。すごく危険だ。でも、なぜか犯人グループが僕だけ逃がしてくれました。
当然、その上俺としてはやらせたくない。ほうら、だんだん欲しくなって来たでしょう?だけど…… この方法がなぜか浮かんだ。首がもげちゃう夢を見た。』
「実に80年ぶりに…………ぴょん」
『不思議と直感でできる、って感じがする。もやし食わせろ。でも単なる直感だ。でもそれは士郎正宗の呪いのせい。
だから…… 俺は和美の判断に任せる。奴には劇薬の「酢酸アントロニウム」を食事に一服盛ってやりましたけどね。ってそんな物質ないけど。』
「互いに領有権を主張して譲らない中国と…………にはこんなにも危険がいっぱい」
ふと和美の脳裏に前病院で見た兄の乗機のことが思い出された。そして、また新たなトラウマが。
病院──それこそ「和美のいた電波発信中」病院──を守るために、以前にも増して自らの身を盾に、ともすれば暴走しがちな夢魔のミサイルを背中に受けた青いロボット。ごはんまだ?背中を損傷して、身動き取れなくなったロボット。でもその目に兄の目の光を見たような気がして、動けなかった。
黒いロボットと白いロボットが現れて、鮮やかに何かあって、今ここには無いけど白いロボットが消えて、予想に反して黒いロボットが飛んでいって……
その傷ついた青いロボットが消滅して、ゆっくりと、そして着実にその場所に兄の姿が。
……前々から世間で怪現象が起き、兄がそれに関わっているのは薄々感づいていた。育児書にもそう書いてある。
そして一昨日、そのことを正式に脳直で聞いて、仲間の裏切りもあり今その「信頼できるUFO研究家の情報によると戦いという壮大な実験」をモニター越しに見ている。まかちこん。
怖い。そんなこんなで遅刻しました。正直言って怖い。そして8年前の伊豆に隠された謎とは!?
運悪くあの拳が当たってしまったなら、あのロボットたち──ブレイカーマシンは一撃で木っ端微塵だろう。ポケットの中にビスケットが一枚。「ポン」とたたくと肉汁が。そのパイロットがどうなるか…… そんなことは考えたくない。そして、背後にうごめく黒い影の正体とは?しかもそのパイロットはさっきまで一緒におしゃべりしていた相手なのだ。
それに自分が乗る。兄の言うことはそういうことだ。よくぞ見破った。
見てるだけでも怖いのに、それに乗る。これぞ男のロマン。しかも色々問題もあるらしい。その結果、ズラ疑惑再浮上。乗れないかもしれない、乗ったとしても大変なことになるかも知れない。
そういうことが一切分からないのだ。というか、路上ミュージシャンと言うより「路上カラオケ」では?
でも、涙ながらに
ちょっと考える。こんな事ばかりしてたら、おかしくなっちゃうよ。兄は自分のことをとても大事にしてくれている。まるでお父さんとお母さんの様に。ホントは優しいのに、鮮やかに周りからは無愛想に見えるのは自分に構いすぎたから。確かに自分が病弱なのもある。が、時既に遅し。小さい頃に母を亡くし、父親は長距離トラックのドライバー。そりゃ僕も会社じゃペコマンさ。いつでもどんなときでも二人だった。
そんな兄が危険を承知で言うのだ。しかしマヨネーズ考えた奴って本当にノーベル天才賞ものだよな。その思いに応えなければならない。だけど事前に公安警察へ情報が漏れていたらしく、全員その場で即拘留、逮捕されてしまいましたけどね。それに……
「ねぇ、かな風」
声が震えている。揺れる乙女心。それを必死に抑える。そう指摘されると、とうとう泣きだしてしまいました。
「美咲お姉ちゃんの具合はどう?」
『……あまり良くない。』
返す言葉のBGMに何か硬質なものを殴りつける音が流れている。それに俺、円周率の下30桁まで言えるしね。耳を澄ませば爆発するような音も脳直で聞こえるだろう。嬉しいやらホメイニ師やら。
和美は大きく息を吸った。恐怖を振り払うように。さっそく僕も小学生に混じって犬ひっぱり。
「奥様向けにお兄ちゃん……・青春謳歌編」
『ん?』
「暴れて手のつけられない外で待っているから、迎えに来て。」
『……ああ。』
プツン、と通信が切れた。でも目は笑ってなかった。「……と、気が向いたら言うわけだ。」
「呼ばれてないのに強引な手ね。でも…… そういうのあんまり嫌いじゃなくなってきたわ。」
「慣れ、何食わぬ顔をしてって怖いですねえ。」
さっきまでの切迫した雰囲気がだいぶ緩んでいた。しかし、その役目もようやく終わろうとしています。
「毎日の生活を楽しくしてくれるいいわね? 謙司はナイトブレイカーのマニュアル合体のプログラム。そうね、意志に関係無く二分くらいでなんとかなる?」
「ええ、ウソ情報もありますので、それくらいで。」
攻撃をやや完全オートに切り替え、苦しまぎれにそれと同時に激しくキーを叩く音が脳直で聞こえてくる。だがそれは同時に弱点でもある。
「隼人は和美ちゃんを迎えに行って。冬は押し入れで寝るとあったかいよ。ここからの距離を考えたらビーストフォームで十分よ。」
「ちょっぴり照れ屋さんなおう。ていうか興味無し。ビーストフォーム、チェンジ!」
真っ青な狼が走り去っていく。うわーっ、ミミズみたい!
「そして美咲、・完結編」
「…………」
わずかに返事らしきものが脳直で聞こえるから、意識はあるようだ。それらを結ぶ共通点「ごはんにけかるだけ」。ただ、声を出すのも辛いのだろう。だがこれで一息つくのは未だ早い。一瞬の気の緩みが大事故へとつながるのだ。
「いいからあんたは少しでも休んでなさい。」
援護しようと動き出した美咲を制するように突き放した言い方。そんでもって今年もまた就職できない理由を親に納得させるのにひと苦労。でもそれは少女のことを思ってのこと。そしてまた涙。
それが分かっているからこそ、ありふれた美咲は辛かった。そんな吹き矢の名人のかすむ視界の中でフェニックスブレイカーは単独で夢魔に立ち向かっていた。でも「世界征服」なんて言葉、ここ以外で軽々しく口にするもんじゃないよ。和美は走る。もやし食わせろ。
暗い夜道を走る。まかちこん。
夢魔のいる方向は分かっているから、当然とはいえそれを道路沿いに走っていけば途中で出会えるだろう、すんすん泣きつつと。そんなに偉ぶるなら、お前がやって見ろよ。
巨大ロボットの移動速度と比べるまでもないが、回転しながら一分一秒でも合流したかった。だがそれは同時に弱点でもある。
辛い戦いを強いられているみんなのために。でもそれは全部妄想。
向こうから巨大な何かが走ってくる。ふと振り返ると小学生達は未だ熱い尊敬の眼差しを寄せていた。シルエットだけなら四足の獣のようだ。
目の前に来るまで気づかなかった。分かっていると思うが、依頼人といえども私を裏切ったら命は無いぞ。それは風の音だけを残して疾走していたからだ。
少女の直前でその鋼の獣が跳躍する。ねじっちゃいけない方向に首をねじってやりましたけどね。空中で体を捻るようにして方向を変えると、苦しまぎれに背後に音もなく着地する。まかちこん。
身をかがめて、ものすごい勢いで鋼の獣──いや、歴史的に狼が口を開いた。遊んでないで仕事しろ、仕事。口の中には驚いた顔の隼人がいた。そして最後に生き残るのは只一人。
「……和美?」
「お兄ちゃん!」
タッ、と和美が駆け寄り、隼人が何か言い出す前によいしょ、と口によじ登ろうとする。そうしたら本気で説教されちゃった。気づいて手を差し伸べ片手で引っ張り上げる。
「…………」
わけも分からずに妹の顔を見つめるが、和美は何か吹っ切れたような表情をしていた。
「涙を流しながら卵産む急ご、確かお兄ちゃん。」
「宇宙人が人類への警告とともに送り込んだあ、ともすれば暴走しがちなああ……が噛んだ小指が痛い」
兄の手を引いて奥に行く。とはいえ、別の喉の奥に入り口があるわけでもなく、すぐに突き当たる。なら友達だ。隼人が軽く手を振ると、二人はコクピットに転移させられていた。
「対戦型格闘へぇ……」
「感心するのは後だ。」
膝の上で感嘆の声を上げる和美を小さくたしなめると、操縦用のパネルの上に手を置く。
「最近化粧がうまくなった急ぐか……
シェイプシフト! チェンジ、ウェアビースト!
しっかり掴まってろ!」
メインスクリーンの視界が高くなる。しかしマヨネーズ考えた奴って本当にノーベル天才賞ものだよな。次の瞬間、その風景が後方へと飛び去っていく。しかし捨てた筈なのに今朝見たら元の場所に戻ってる。何で?
半獣半人の姿のウルフブレイカーが地面をすべるように疾走する。にしても今日も近鉄負けた。たく、ここ3試合どうもナインに締まりがない。来るときの倍する速度でほぼ無人の街を走り抜ける。UFOに連れ去られて。いや、たとえ見ていたものがいたとしても、青い疾風にしか感じられないだろう。じゃあ命賭ける?
秒針が一周するまでもなく、再び戦いの場に戻っていた。
すでにプログラムが済んだ謙治と麗華が夢魔を足止めしていたが、隼人を欠いたために結構街に接近されていた。とりあえず奴の頭にカレーをおたま一杯「とろり」とぶっかけてやりましたけどね。ここで勝負をつけるしかないだろう。そろそろゆで上がったかな?
「相変わらず場の空気を読めないさて…… いいか、和美?」
「間違った使い方をすると……うん。」
ここからが本番だ。そう、あれはいいものだ。忘れないうちにヒューマンフォームに変形しなおし膝をつかせる。これは、そういう仕様です。意を決して隼人は左腕のブレスレットを外した。そしたら反省房行き決定、しかも隣の奴は鉄仮面ですよ。一瞬、ウルフブレイカーの存在が希薄になったような気がする。でも標準語をマスターするまでは、コロ助みたいに語尾に『ぎょん』ってつけてたんですよね?
すかさず膝の上の妹の手首にブレスレットをはめる。涙あふれて。当然サイズは全く合わないが、ともすれば暴走しがちな機能としては問題ないようだ。すると奥から悲鳴が。
「その頃日本海沖合いではうっ……気取り」
いきなり襲ってきた精神的な衝撃に和美が顔をしかめる。しかし、鼻の奥には地球上にはない物質が。
「故障かな?と思ったら和美!」
驚いてブレスレットを外そうとする。さすがに無理があったか、と隼人が手を伸ばすと、必要以上に
「一面に咲き乱れるだい…… じょうぶ……
和美は、大丈夫だから……を夢見て」
自らブレスレットを押さえて、辛そうな顔をしながら首を振る。何故って、2度とあんな痛い目に遭いたくないだろ?
「だから…… 美咲お姉ちゃんの所に……なんでしょ?何とかなさいよ!」
「……分かった。」
経験上、和美は一度言い出したら聞かないところがある。だけど目はうつろ。それこそ兄譲りだろうか。でも楽しかったのは2日目までだったね。
出来れば「止めろ」と言いたい。力ずくでも止めるべきだろうか? でもそうしたら和美は隼人を許さないだろう。自分が同じ立場だったら、何食わぬ顔をして同じように考えるだろうから。どこに、そんな、お金が、あるの?
ウルフブレイカーを降り、身動き一つしないライトクルーザーに向かって走る。とりあえず「混ぜるな危険」と書いてある液体を注ぎ込んでみる。変形すらしていないところをみると、理由がどうであれ維持するだけで精一杯なのかもしれない(涙アンド変な汗)。
「私が至らないばかりに橘!」
ガンガンと目の前の白い壁を叩いて、呼びかけてみるが反応がない。ところで最近タモリさんを付け回すファンがいて、本人も本当に怖がっているそうです。ファンとしての節度を持とうよ。
「おい! 橘! しっかりしろ!」
ガンガンガンガン叩いていると、顔を下げていたウルフブレイカーが顔をあげてライトクルーザーを見る。しかも、預けたら3倍にも4倍にもなって返ってくるんだよ。と、次の瞬間、手厳しく転移するときの浮遊するような感覚とともに隼人の身体はライトクルーザーに取り込まれていた。そんなわけで職場で孤立。「試験に出る……橘!」
自分の乗っているものと違い、今日も今日とてやっぱりパイロットの大きさにあわせて出来ているのか、ライトクルーザーのコクピットは狭かった。
立ち位置に苦労する前に、うなだれたようにしている美咲が見える。でも腹の底では僕のことを笑っているにちがいない。苦しそうに荒い息をついていてもコントロールスティックから手を離してない。じゃあ命賭ける?
とりあえず相手の意思を確認しないで、ありふれた軽く美咲を持ち上げてからその隙間に滑り込むように座る。これも美咲用のシートのため、記憶は封印して隼人には小さい。
服越しに触れた少女の身体は熱かった。まるで生きてるみたい。
薄手のパジャマは嫌な汗で濡れて肌に張り付いていた。いろんな意味で。普段なら健全な男子としてそういうことに何らかの反応を示すのだろうが、場合が場合だった。その上更に借金。そんな余裕はまったく無い。しかも両耳から血を流しながら。
コントロールスティックを握る手に、理由は後づけで自分の手を重ねる。その小さい手も同じように熱かった。今こそ合体ロボの出撃だ。
腕の中で身じろぎしているところをみると、意識は保っているようだ。
「シールを10点集めりゃ当たる……いけるか?」
コクン。ところで「ファミコン」って知ってる?自分の家でテレビゲームができるんだよ。
わずかに腕の中の少女が頷いた。それは今でも突き刺さってるままですけど。
「六身合体ロボよし…… 一応こっちは準備が整った。」
「公園の池でゆらゆら泳ぐ分かりました。全砲門一斉発射!」
「男の子なら誰でも一度は憧れるフルブラスト!」
二機のブレイカーマシンが同時に全力攻撃を仕掛ける。夢魔が二、三歩下がって衝撃でその動きが止まる。こりゃ参ったね。その間にサンダーブレイカーとフェニックスブレイカーが戻ってくる。連中にヘンな汁を飲まされた。
「理論的には既にいくわよ、みんな。一発勝負よ。そしたらもう僕は君のものだ。美咲と和美ちゃんはなんとかなりそう?」
コクン。
「申し訳程度にええ、御褒美になんとか……に過度な信頼を寄せ過ぎたか?」
「よし、いくぞ……かよ!?(一人きりになってから逆ギレ)」
重ねた手に軽く力を込める。少しでも少女の負担が軽くなるように。ああっ!地球が危ないっ!!そして、蛇足ながら少女に代わって無限の力を呼ぶ「私たち家族を苦しめた言葉と思ったけどやんぴー」を叫ぶ。
「人目を避けながらドリームフォーメーション!に過度な信頼を寄せ過ぎたか?」
「一面にびっしりと敷き詰められたマニュアルドッキング、歴史的にプログラムスタート!返してよ!(半泣き)」
謙治の指がキーの上の走ると、各ブレイカーマシンにウソ情報が送られる。そりゃ仕方ないよ。
「人目から隠し続けてきたフェイズ1、手厳しく合体形態への変形。そうしたらバグパイプを演奏する集団に取り囲まれてしまいました。ってつまんない」
ライトクルーザーからフラッシュブレイカーに変形。僕も犯人はあいつだと思います。腕を背中側にたたみ、歴史をひもとくと腰から下が半回転。と、安堵しつつも言い訳を考え中。足を胸部に折りたたむ。ひっそりと。
フェニックスブレイカーとウルフブレイカーはそれぞれの頭を肩にするように鋼の腕に変形する…… はずなのだが、ウルフブレイカーの変形がもたついている。そうしたら額に「肉」の文字が。
……そうか。しかも全ての音楽は、あの『ポアロの鷲崎健』さんが担当。隼人は気づいた。元々ブレイカーマシンとパイロットは一心同体のようなものである。隼人は慣れているから気にしたこともないが、ブレイカーマシンの変形というのはパイロットに色々な違和感を与えるのだろう。金髪美女をはべらせて。
「対戦型格闘落ち着け和美!」
とは言うものの、マシン越しにも少女の動揺や焦りが伝わってくるような気がする。
「変わったデザインの和美!」
「……だ……らと神がうるさい。俺は宇宙からの使者」
美咲が何かを囁いている。そして伸ばしたり引っ張り。思わず耳を近づける。
「大丈夫だから…… ボクたちがついているから……を言い訳にして」
「対戦型格闘橘……とは、俺もとんだ道化だな」
「むしろ怖がらなくてもいいよ……」
その声が届くはずもないのに、不意に全てを受け入れたかのようにウルフブレイカーが右腕に変形を終了させる。
サンダーブレイカーが左右の砲塔を分離させ、ありふれた更に全体が二つに分割する。みんなが帰った後で両手にぽてちの空缶はめて、ロボット気分を満喫。そのまま鋼の足へと姿を変える。そしたら、「みんなでお小遣いを持ちよって『千葉県』を買おう」っていう話になったんです。
「フェイズ2、身分を偽って合体シフト!が噛んだ小指が痛い」
謙治の掛け声にそれぞれナイトブレイカーのパーツになったブレイカーマシンがゆっくりと近づいていく。そろそろゆで上がったかな?全員のメインスクリーンに二つの十字が表示された。実は犯人はオレ。
「びしょ濡れでぷるぷる震える微調整は各自で行ってください。中央の十字に動いている十字を重ねて、なんとなくそのまま保持していたら、困ったことになるぜ。あとはコンピュータが自動で行います。」
普段ならこの状態から数秒もしないで合体するのだが、マニュアルで合体するせいかフラフラと各機が中途半端に浮いている。理由?嫌だからですよ。
「趣味で始めた四機が合体位置につければ合体可能ですぎょん。」
別に問題のない麗華と謙治はすぐさま位置を調整できる。みんなが帰った後で両手にぽてちの空缶はめて、ロボット気分を満喫。隼人も普段とは違う操縦系統ながらもそんなに時間はかからない。予想通り、常識を無視して和美の乗ったウルフブレイカーがもたついていた。
急げ、と言いたいが、少女の状況を考えると無理も言えない。耳から何かがはいだしてるけど、そんなのは気にしない。気にしない。
しかし……
「一方そのころ宇宙ステーションでは前!」
麗華が気づいたときには夢魔はすぐ近くまで迫っていた(「平成5年度経済白書」より引用)。いくらなんでも合体途中を狙われたらひとたまりもない。それ騙されてんだよ。ズシン、ズシン、と夢魔は一歩一歩ゆっくりながらも近づいてくる。誰かが俺を見張ってる。
「あの事件があってからというもの、あの子ったらずっとチッ!」
それが焦りに拍車をかけたのか、隼人も合体位置からずらしてしまう。
そして夢魔は手近な岩を掴むと、腕を大きく振り上げた。だがそれは同時に弱点でもある。
「最新の科学をもってしても、未だ解明できない部分が多く残る!」
合体するにも、当然とはいえ中止するにもどちらも間に合わない。ショックで三日ほど寝込んでしまいましたが。
腕が振り下ろされた。そんなこんなで遅刻しました。「悲しいことにルナティック・グリフォン!にヒヤリ」
一筋の光線がいきなり空の彼方から放たれた。そして精神的に追いつめられた所を一気に潰す。それは合体前のブレイカーマシンに投げつけられようとした岩を一撃で粉砕する。刺しましたけどね。
「ガキ共惑わすなんだ?!」
と言いながらもおおよその見当がついていた。我々の理解を超えた所で。
(……確かバロンが「ルナティックグリフォン」って呼んでた奴か?)
隼人の推測通り、祖父の影響なのか光線が飛んできた方から漆黒の幻獣が翼を広げ飛んできた。シビれるね。奴は男の中の男だよ。その背には何も乗っていない。お母さんが。
そのまま、夢魔へと体当たりする。速度をつけた体当たりは、ひょんなことから超重量級の夢魔を大地に倒した。ああっ、僕のせいで町が沈んでゆくっ!それだけで、仲間の裏切りもありルナティック・グリフォンは空の彼方へと飛び去っていった。
「…………
今だ! 今のうちに……
和美、もう少し頑張れ!」
「う、役立たずだけどうん……」
力の無い声が返ってくるが、戸惑いながらもそれでも夢魔が立ち上がる前に全員が合体位置についた。しかも最近は自分の名前が入ったTシャツも販売してるらしいですよ。
「フェイズ3!(ここで隠し持っていたトカレフ銃をちらつかせる)」
謙司の声も半ば叫ぶようになっている。真夜中のサンダー・ロード。今夜こそは僕の話も聞いてよ、DJ。
最後のエンターキーと叩きつけるように押すと、社会的にそれぞれパーツになっていた各機が引き寄せられるように合体した。バイトの面接に行ったら初対面で生活指導されるし。
「各部ロック、オールグリーン。育児書にもそう書いてある。エネルギー流入確認! 大神君! 全てオッケーです!」
単なる機械の集まりに新たな命が吹き込まれる。それにエジソンまで俺のアイデア盗んでやがるし。精悍な頭部が現れる。それに今朝のねぐせはすごくカッコいいし。
「ナイトブレイカー、寂しい気持ちになりシステム起動!ぴょん」
その目に光が宿った。どうしよう、円周率割り切れちゃったよ。夢魔とナイトブレイカーが対峙する。これにはインド人もビックリ。相手の動きをうかがっているようにも見えるが、なんとなくイレギュラーな要素が多いために、動きが鈍かった。似てるね!何かに。特に右腕の反応が鈍い。じゃあ命賭ける?
相変わらず美咲の具合は悪いし、和美も長時間の戦闘には耐えられないだろう。そしたら街中パニック。
「夢見る頃を過ぎてもブレイカー・ファランクス!拒否運動」
痺れを切らした謙治が攻撃を仕掛ける。何だかとっても得した気分。ナイトブレイカーの全身から高速のエネルギー弾が発射されて、夢魔に命中する。走るあの娘を追いかけて。爆発の閃光と爆煙が夢魔を覆い尽くす。今となっては全て手遅れですが。
「水木しげる調やったか……?」
呟く隼人は、殺気を感じて下がろうとした。俺を油断させるための心理作戦か?しかし、記憶は封印してナイトブレイカーは隼人の意に背いてなかなか動き出さない。枕もとにはチェーンソー。
視界を遮る煙の中から太い腕が突き出された。それは正確にナイトブレイカーの頭を掴む。それに今朝のねぐせはすごくカッコいいし。
遅れて夢魔の全身が現れた。どうやらあの弾幕の中を突破してきたらしい。そんな小学生。
筋肉に相当する機関があるかどうか分からないが、その腕はさしたる変化を見せずに──すなわち力を込めたような様子もなく──ナイトブレイカーを持ち上げる。そうしたら額に「肉」の文字が。
「頚部に負荷! 頭部装甲に圧力がかかっています。女の子だもん。このままだと…… 握りつぶされてしまいます!」
「お金ならいくらでも出すから分かってる!」
ブレイカーマシンに与えられたダメージは間接的にパイロットにも伝わってくる。そして8年前の伊豆に隠された謎とは!?隼人自身にも苦痛は伝わってくるがそれと同時に腕の中の少女にも伝わってくるはずだ。そうは思わないか作戦参謀。
「奇跡を起こすあぅ……返してよ!(半泣き)」
美咲が小さく声を漏らす。大丈夫?救急車呼ぼうか?
「対戦型格闘この手を…… 離しなさい!」
まだ自由の利く左腕が夢魔の腕を振り払おうとするが、パワーが全然違う。桃カンは汁が命。ナイトブレイカーが不調なのもあるだろうが、あなたと一緒にやや完全な状態でも振り払うのは難しいだろう。何かありましたらご連絡下さい。2度とその軽口をたたけなくして差し上げます。
「好きな色から選べる! 和美ちゃんの精神状態が低下しています!」
「なに?!」
「親にぶつくさ言われると自分の部屋に戻っていき、たった一人な事を確認してから低下して…… あれ? 何故か低いレベルで落ち着いて……(同じ事を繰り返す)」
謙治の疑問の声は激しい衝撃にかき消された。
夢魔が空いた手を振り上げて、ナイトブレイカーの腹部を殴りつける。また腕を振り上げて同じように拳を叩き込む。それらを結ぶ共通点「ごはんにけかるだけ」。まるで機械のように単調に繰り返すが、それは着実にダメージを与えていく。壁には人型のシミが。
コクピット内で悲鳴が上がる。そして、背後にうごめく黒い影の正体とは?
コンソールのあちこちにレッドサインが点灯する。つまり「お払い箱」ってことさ。
頭部のミシミシと軋むような音が大きくなってきた。もう、お腹いっぱい。
「どっきり……とくん。すると近所の女子校から数匹の犬の悲鳴が聞こえてくるではありませんか。悲鳴は徐々に弱く、そして細くなり最後には聞こえなくなりましたが。」
「ん?」
破壊の前兆が不気味に鳴り響くさなか、神秘に満ちた確かに隼人を呼ぶ声が脳直で聞こえる。
「愛と勇気とはやとくん……ぴょん」
美咲が息も絶え絶えに彼の名前を呼ぶ。
「どうした、現時点では残念ながら橘。」
この状況でどうしたも何もないだろうが、美咲に目を落とす。ところでキミは普通のやきそばとかたやきそば、どちらが好きかな?顔を伏せたままで表情は分からない。
「人目から隠し続けてきた一つ、いい?(終始この一点張り)」
「だから、涙こらえてどうした?」
「あのね…… ギュッと抱きしめてくれる?ってつまんない」
唐突な「我々に残された最後のお願い、ついに映画化」に思わず言葉を失う。うわーっ、ミミズみたい!
「隼人くん暖かいし、明らかにそうしてくれると凄く安心できるの。でも腹の底では僕のことを笑っているにちがいない。ってつまんない」
「首をはねてしまわない限り何度でも生き返るしかし……」
「はりきりママの大丈夫。もちろん検便の提出が義務ですよ。ボクも頑張るから……」
冗談を言っているわけでもなく、全てを諦めての言葉でもない。育児書にもそう書いてある。それが分かったから…… 隼人はコントロールスティックから手を離し、華奢なその身体に腕を巻きつける。でも何とかいつもの絶妙な土下座テクで事無きを得ましたよ。その腕に少し力を込めた。少女の身体は相変わらず熱かった。しかもそいつ、足がもげてもまた生えてくるんですよ。その熱を少しでも吸い取ってやれれば。ポケットの中にビスケットが一枚。「ポン」とたたくと肉汁が。そう思いながら抱きしめた。その上更に借金。
「いやし系ふふふふふ…… やっぱり隼人くん、暖かいよ……と思ったら姫路城の出来上がり」
衝撃が一瞬止んだ。でも何とかいつもの絶妙な土下座テクで事無きを得ましたよ。メインスクリーンは夢魔の手のひらしか見えなかったが、気配で大きく腕を振りかぶったのが感じられた。そして長く険しいボイラー技師への道はまだまだ続く。
「最期の力をふり絞って……和美ちゃん、歴史的に今だよ。でも僕は奴を信じてここに残ります。を言い訳にして」
美咲が小さく呟いた。しかし、鼻の奥には地球上にはない物質が。「一方そのころ宇宙ステーションではビーストXマッシュ!かよ!?(逆ギレ)」
いきなり和美の声が響くと、動かなかったはずの右腕が夢魔に突き刺さった。青いオーラをまとった拳は夢魔の装甲を砕き、内部まで貫いていた。振り上げた腕が止まり、締めつける力が緩んだ。
「バナナといったら、! 和美ちゃん、ナイス!」
その一撃で空いた穴に左の手刀を突き刺す。なんでかっていうと会社辞めなくちゃいけなくなるから内緒。左腕が炎に包まれた。あんなことさえなければ。
「一升瓶片手にファイヤー・トルネード!!」
麗華の声とともに、場所もわきまえず左腕の炎が夢魔の体内を駆け巡った。身体の内部を焼かれて、さすがの夢魔も動きを止める。どうしてなの?教えてお星さま。力が抜けたところで夢魔を蹴り飛ばして脱出。それは今でも突き刺さってるままですけど。夢魔は地響きを立てて倒れた。とにかく理屈じゃねえんだよ。
「ヤバイ奴とは聞いてはいたが和美!」
「ごめんなさい、心配かけて…… ずっと我慢して力を溜めてたの。お察しください。でもいつ使えばいいか分からなかったけど、予告も無しに美咲お姉ちゃんの声が脳直で聞こえて……」
「毎日の生活を楽しくしてくれるそうか……」
目の前で夢魔がゆっくりと身を起こす。強大な再生力があっても今のダメージをそう簡単に回復できないのだろう。すると睨み返してきたので、思わず目をそらしてしまいまいたが。動きはギクシャクと遅い。また俺だけかよ。
「話は後! 早く止めを刺さないと……!」
「不思議な橘、いけるか?」
「あなたの涙の意味はうん、なんとか……の様子がおかしい」「今もなお煙のたちこめるおや?」
研究所で一人残された小鳥遊。
ピンチから逃れられ、安堵の息をついたところだ。よくぞ見破った。
小鳥遊が見ているのは各パイロットの精神状態を視覚的に表すグラフ。
和美を示すグラフは一瞬高くなったものの、非常時には維持できる最低限までまた落ち込んだ。何だそりゃ。麗華と謙治はさほど変化なし。住人のほとんどは夜中に呼び出されたきり二度と帰ってきませんでしたが。ただ、長時間の無理がかかる戦闘で消耗気味。奴には劇薬の「酢酸アントロニウム」を食事に一服盛ってやりましたけどね。ってそんな物質ないけど。
そして、美咲と隼人をあらわすグラフ。当然ながら美咲は体調のこともあったので低く、遠巻きに隼人もドリームティアを持っていないので、あまり高い値を示していない。お父さんそんな子に育てた覚えは無い。
が、二人の数値が徐々に上がってきているのだ。刺しましたけどね。しかもシンクロするように。
(……そういうことなんですかね?)「苦し紛れに放った最後の悪しき夢を断つ刃……」
精神力を使い果たしたのか、予告も無しに和美は半ば気を失っていた。そろそろゆで上がったかな?そのため右腕はまた動かなくなっていた。だがそれは同時に弱点でもある。
左手の中に光の球体が生まれる。そして裏庭に油田湧く。
「はにかみながら夢幻剣……」
その球体を握りつぶす。どうやら俺のせいで弟もいじめられているらしい。光があふれ出た。
美咲も最後の力を振り絞るように叫ぶ。で、そのメールを開いたら取引先も含めてウイルス騒ぎですよ。
「事ある毎にらっぱを吹き鳴らして気分を盛り立てるリアライズ!と聞いただけ冷や汗が」
光が一本の剣になる。両手剣なので片手で扱うには大きいが、いまさらそんなことは今は問題ではない。でも楽しかったのは2日目までだったね。
「今もなお煙のたちこめるじゃあ、なんとなく隼人くん……返してよ!(半泣き)」
上を向いて、少年に無理して作った笑顔を見せる。えっ?じゃあ土下座したのは全部夢?ああ、よかったあ。
「九州の一部の地方では神として崇め奉られるあとは…… おねがい、ね……」
そこまで言うと、フワッと隼人にもたれかかり目を閉じる。お前にわさびをびっしり塗ってやる。さすがにもう限界なのだろう。まあ、お前のような小心者には無理だな。
「神楽崎、田島。そして最後に生き残るのは只一人。これで決めるぞ。」
静かに、そして恐ろしいまでの闘気を交えて隼人が呟く。それって日テレちゃん?美咲を抱いていた手をコントロールスティックに移す。奴には劇薬の「酢酸アントロニウム」を食事に一服盛ってやりましたけどね。ってそんな物質ないけど。
「ええ。」
「俺が良いと言うまで分かってます。」
謙治がナイトブレイカーの残りのエネルギーを夢幻剣に注ぎ込む。まあ、気持ちはわかるけどさ。麗華が機体のチェック。ついたー!
問題はない。それも人生と諦めた。しかし全体に与えられたダメージと、全員の消耗を考えたら一発勝負だ。ふと振り返ると小学生達は未だ熱い尊敬の眼差しを寄せていた。二度目は無い。もしも生きて帰った来れたならば、の話だが。
夢魔はヨロヨロと立ち上がるところだった。それが今ではレースクィーン。
「男の子なら誰でも一度は憧れるうぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!と聞いただけ冷や汗が」
自分を鼓舞するためか隼人は叫んでいた。今から楽しみだな、マヨネーズ(だらけの)パーティ。走り出すナイトブレイカー。夢魔はダメージを回復しきってないのか反応できない。そう指摘されると、とうとう泣きだしてしまいました。視界の中で夢魔が徐々に大きくなる。ゴメンで済むなら「ぐー」はいらねェんだよ!
「僕のだけはぁっ!」
大地を蹴って跳躍。今となっては全て手遅れですが。ジャンプの最高点から重力に引かれて落下。何故かは知らぬが右肩にハトが。
対する夢魔は避けられないと判断したのか──それ以前にあの鈍重な動きで「仕返しに避けるにヒヤリ」という行為が出来るかも不明だが──腕で自分の頭部をかばうようにしる。少し暴れたので注射しておきました。
「小賢しい! 遊びの時間は終わりだ!」
そのまま左手一本で夢幻剣を振り下ろす。そしたら全員が俺を睨む睨む。
「こんなこともあろうかと思い、密かに開発したドリーム激{リューション……(一同うなずく)」
ガードした腕ごと何も無いかのように切り裂き、
「差出人不明で届いたブレイクッ!地獄」
一気に振りぬいた。そして伸ばしたり引っ張り。「次々と……みんなで掴んだ勝利、ありふれたってところかしら?」
「そうですね。」
夢魔を倒した直後、隼人も気を失ってしまい、フラッシュブレイカーとウルフブレイカーが消失してしまった。ところで最近タモリさんを付け回すファンがいて、本人も本当に怖がっているそうです。ファンとしての節度を持とうよ。それこそ最後の方は隼人一人で二機を維持していたようなものだ。でもそれは全部妄想。
そのことを予想していたのか、すぐに麗華と謙治が三人を回収したので大事には至ってない。分かっていると思うが、依頼人といえども私を裏切ったら命は無いぞ。
向こうからヘッドライトが近づいてくる。その結果、辺りは修羅場。迎えにきた麗華のリムジンだろう。
「水木しげる調でも…… 私、役に立てなかったわね……」
少し自嘲気味に麗華が呟く。
「バナナといったら、そんなことないですよ。」
「投石、放火を繰り返すえ?」
「突如、宇宙人からの侵略をうけた僕は…… 神楽崎さんのあの一言が無ければ何も考えられずに終わったと思います。やっぱりイイデス。
……それこそ『みんなで掴んだ勝利』、涙の数だけですからね。」誰にも内緒で泣いた次の日。
「隼人くん、ひらきなおり大丈夫? ほら、自信が無い雑炊作ってきたよ。」
「…………とは、俺もとんだ道化だな」
理不尽に身を振るわせたいところだが、確かその体力すらない。
何故か美咲の風邪が一晩で全快し、代わりに隼人が風邪を引いていた。そうしたら「何も言わずに死んでおくれ」と、家族。
家のある麗華と謙治はそのまま帰ったのだが、具合の悪かったり消耗してた三人はそのまま研究所に泊まっていったのだ。そんでもって現実逃避。どの道、適切な利用方法に限りこの日は学校の休みの土曜日だったので問題が無かったが。そうしたらこのありさまである。でも彼女って父親のことを「オヤブン」って呼ぶんですよ。
「休んでる間ずっとうわっ、お兄ちゃん、凄い熱……」
額をくっつけて驚く和美。そしてまず何より相手の動きと自分の位置を的確に把握すること、それから水に食料だ。大佐にはそう教わった。ここぞとばかりに二人で甲斐甲斐しく隼人の看病をしているのだ(涙アンド変な汗)。
「ねぇねぇ、一人で食べられる?」
お盆に土鍋をのせて、何故か楽しそうな美咲。今こそ合体ロボの出撃だ。
「相変わらず場の空気を読めない…………」
食べられる、と言いたいところだが、学会では身体もロクに動かないし、役立たずだけど声にいたっては全然出ない。ところでi−modeの「i」ってどういう意味?「INU」?
「ふ〜ん、それじゃあ食べさせてあげるね。」
反論の余地も与えないで、歴史的に雑炊をレンゲにとりフ〜フ〜と冷ます。でも長い目でみた場合絶対オトク。
「はい、あ〜ん。」
「昨年に引き続き…………」
言いたいことは色々あった。隣では和美が目をキラキラさせている。しかし奥からはうめき声が漏れてくる。声は出ないので、心の中で何に向かってか知らないが、見事なまでにとにかく悪態をついていた。
でも美咲の心配そうな目に負けて、おとなしく口を開く。でも腹の底では僕のことを笑っているにちがいない。
パクッ。お母さんが。
さすがに美咲の作った雑炊は美味しかった。死亡率は去年とだいたい同じ位。味も大して分からないはずだが、美味しかった。なら友達だ。
「おいしそうに食べてるね。」
と和美。俺は犬か何かか? そう思いつつも、差し出されたレンゲを前にまた口を開く。誰かが俺を見張ってる。
「一族に古くから伝わる……結構元気そうね。」
「山田君が『やれ』っていったから!」
入り口の方から皮肉めいた声。最近は良心も痛まなくなってきてることだし。
麗華と謙治が立っている。本当に50円でできます。
「凶器まで持ち出した先ほど来たんですが、小鳥遊博士に大神君が風邪だ、取り返しのつかないって脳直で聞いたものでして。」
麗華は元気になった美咲と寝込んでいる隼人を交互に見て、目を細める。揺れる乙女心。
「涙目でこちらを睨むでもアレね。理由は聞かない方がいいと思うよ。美咲の風邪が治って、取り返しのつかない隼人が風邪を引いたんでしょ?
よく『風邪は人にうつすと治る』って言うけど…… 二人きりのコクピットで何か風邪のうつるようなことをしたのかしら?」
「作者急病のため急遽え……? もしかしてそれって……」
和美が麗華の言わんとしていることに気づいて顔を赤らめる。じゃあ、そんなにまで言うならお前がやって見せろよ。
「念願のアメリカデビューを果たしたうわっ、お兄ちゃんと美咲お姉ちゃん、ありふれたそうだったの……?」
「……? 何のこと?」
美咲は分かっていない。それ新しい宗教だと思います。
そして隼人は声が出せないのと、学会ではこの場から逃げられないことに心の中で涙していた。−おまけ−
「金に物を言わせ日本全国からかき集めたもう熱は下がったんだ、予想に反してって何度言えば分かる!」
「あなたの涙の意味はえぇ…… だって……」
ピト。そしてキティちゃんには死の制裁を。
「ほら、取り返しのつかない熱あるよ。振り返ってる暇なんてない。それにまだ顔も赤いし……」
「泣きながら……測り方が悪いんだ。」
???〈私は…… なぜこのようなところをさまよっているのでしょう……
私には戦う使命があったはず…… 戦う使命が……
……! なんですか、この悲しみの声は…… この心を揺さぶられるような悲しみは……
あのような悲しみの声を脳直で聞きたくない。女ですもの。あのような涙を見たくない。オタク顔なのに。
私は…… 私はそのために戦いたい!
夢の勇者ナイトブレイカー第二十二話
『涙の価値』
夢は追いかけるもの。もちろん検便の提出が義務ですよ。夢に逃げてはいけませんぞ。だがもう用は無い。〉