美咲&隼人ラブラブ(笑)SS 二人を分かつ雨
ザーーーーーーー
雨は降り続いている。
隼人は雨を避けるように橋の下に腰を下ろした。
ただ、雨の中を走りつづけたので、服は絞れるくらいに濡れていた。というか、脱水をかけていない洗濯物よりも水浸しだった。
腰をおろした部分にはすでに小さな水溜りができていた。今更土で汚れようとも関係なかった。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」
荒い息をつく。心臓も破裂しそうなくらいにバクバク言っている。
ただ、鼓動が激しいのは走ってきたからだけではなかった。『だからお前はおせっかいなんだよ!』
『お兄ちゃん!』
ちょっとした些細な偶然の重なり合い。ちょっと機嫌が悪かったときに起きたこれまたちょっとしたハプニング。
『そう…… だよね。』
(違う! 俺はそんなことを言いたいんじゃない!)
『ゴメンね。ボク、迷惑だよね……』
(違う! 絶対違う! 俺は、お前に……)
思い返すたびに蘇る後悔。
『ゴメンね……』
泣き出しそうに潤んだ瞳。止める間もなく雨の中に走り出した少女。
妹に怒鳴られる前に隼人も雨の中に駆け出していた。少女の足は見かけから想像できないほど速く、視界の悪い雨の中であることもあってすぐに見失ってしまった。彼女の家にも足を運んで、ドアを叩いたけど反応はない。
知っている範囲であちこち走り回っても見つからない。
しばらく走りつづけて、橋の下で小休止。
呼吸は落ち着いたものの、鼓動はまだおさまらない。
怖い。
……そう怖いのだ。あの少女を失ってしまうことを。あの笑顔を、やさしさを、暖かさを失うのを何よりも恐れていることに気づいたのだ。
(俺は……)
ふと視線を上げる。川をはさんだ反対側に人影が見えた。小さな人影が膝を抱えて、その間に顔をうずめるようにしていた。
「橘!」
雨風の音に負けない大声で隼人が叫んだ。その声に向こうの人影がピクリと反応する。
隼人の姿を認めて、反射的に腰を浮かせようとする。
二人を隔てるものは雨で水かさの増した川だけだ。何のためらいもなく隼人は川に足を踏み入れた。
「行くな! 行かないでくれ…… 美咲!」
名前で呼ばれ、逃げ出そうとした少女が動きを止める。
「美咲! 美咲っ!!」
半ば熱にうなされたように川を渡る隼人。長身の彼でも、そろそろ腹の辺りまで水が来ている。
「隼人くん危ないよ!」
やっと聞いた美咲の声。もう手放したくない。
更に水かさは増してくる。もう歩いてられなくなってきて、激しい流れの中を水をかいて泳ぎだす。
顔を上げれば心配そうに見つめる美咲が見える。それが何物にも代えられない力を与えてくれる。
何度も流されそうになりながらも、再び足のつく深さにまでたどり着いた。
水を吸いまくった服は鉛のように重く感じられる。それでも一歩、また一歩と進んでいく。
美咲はもう逃げ出そうともせず、隼人を待っていた。
お互いの距離はあと一歩。
「隼人くん……」
「…………」
隼人は最後の一歩を踏み出して、そのまま無言で少女を抱きしめた。二人とも濡れて体が冷え切っている。
「馬鹿…… こんなに体が冷たくなっているじゃねぇか……」
「隼人くんも冷たいよ。でも、暖かいよ……」
「……すまんな、美咲。俺が……」
「(遮って)ううん、だってボクが……」
「(遮って)いや、それはいい。だから……」
「だから?」
「おせっかいでも迷惑でもいい。俺の…… ずっと俺のそばにいてくれ……」
……コクン。
言葉を返せずに真っ赤になった美咲が小さくうなづく。それを雰囲気で察した隼人がいったん美咲から離れると正面から見つめる。
「その…… 悪いが目、閉じてくれないか……?」
……コクン。
赤い顔のまま少女は目を閉じると、わずかに上を向く。
隼人も目を閉じ、ゆっくりと顔を近づかせ……
うっわぁ〜 めちゃくちゃラブラブやん。
書いているほうが恥ずかしくなりそうです。(笑)
こんなことするんですかねぇ、この二人。