AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する

ラシェル&ジェラードほのラブSS 幽霊屋敷?

 

「へぇ〜 そうなんだ。」
 網の上の肉をジェルと奪い合いながらリーナちゃんの話に耳を傾ける。
〈私も一緒に聞いていたのですが、そうらしいようで。〉
 と、グリフォンが続ける。
 うん、これだけじゃ分からないか。
 じゃ簡単に説明。あたしたちチームグリフォンの一行は海に来ていた。海に来ているって言っても、車で数時間なんてところじゃない。グリフォン──宇宙戦艦だったりする──に乗ってやってきたこの惑星。名前はディープシーという「名は体をあらわす」の典型的な星だ。
 海で泳いで、ビーチバレーなどに興じて、夜はバーベキュー。まあ、定番といえば定番の海を楽しんでいるわけだ。
 それで、シルバーグリフォンは今その艦載機ごと海底で待機している。さすがに小型とはいえ150m級の戦艦をとめておけるような所はない。そしてその情報端末として、周囲を知るセンサーや簡単に移動できる機構や発声装置をまとめたものをジェルが作って、これをリーナちゃんお手製SDグリフォンのぬいぐるみ(全長30センチくらい)に入れたのだ。
 他の機の分もあるというのだが、海底から、しかもグリフォンに格納されている関係上、グリフォン以外は端末として使えないということだ(出力の関係がどうとか言ってたけど、面倒くさいからパス)。
〈海岸の近くにある森なんですが、その真中くらいに今は誰も住まない館があるそうなんです。〉
 件のSDグリフォンは身動きがとりづらいからか、リーナちゃんの肩の上に乗っている。
「ええ、先ほど散歩していたら、近く漁師の方に教えていただきました。」
 散歩に行っていたそうだけど、その漁師の人に気に入られてたくさん海産物を貰ってきたりする。可愛い子ちゃんは得ねぇ……
 ちなみに向こうではヒューイとカイルが食料の摂取にいそしんでいた。アレだけ大量の食材──それこそリーナちゃんがもらってきたのも含めて──だいぶ減っていた。この二人がいないだけで、世の中の貧しい人たちが何人助かるんだろうか……?
 ま、いいや。
 ジェルがいい具合に焼いた肉を横から掻っ攫って食す。恨めしそうな目で見ているが無視無視。
 そんな風に食事を済ませると、あたしはビシッと立ち上がった。
「よし、決まり! これから肝試しよ!」
「……はい?」
 海パンにTシャツ。その上から白衣を着たとぼけ顔の男が間抜けた声をあげる。生意気にもちょっと呆れたような顔をしている。
「き・も・だ・め・し。分かる?」
「……はあ。」
 気のない返事。
「あの…… ラシェルさん。『肝試し』ってなんですか?」
 いやぁ、あたしもこう聞かれるとは思わなかったよ。逆に根本的な質問を受け言葉に窮していると、
「一般的には『恐怖心を起こさせるような場所を指定して行かせるなどして、その人の恐ろしさに耐える力を試すこと。』と定義されています。
 まあ、察するにその『森の中の人の住まない館』の話を聞いて突発的に思いついたのでしょう。」
 そこまで言うと、ちょっと小馬鹿にしたように鼻で笑う。
「……単純ですな。」
 カチン。
 あ、待てよ…… 不意に思い出したことがある。そーいやあこいつ「お化け屋敷」が苦手だったわねぇ…… まさか? うふふふふ……
「単純で結構。じゃ、行くわよジェル。」
「……私とですか?」
 嫌そうな、面倒くさそうな表情を浮かべる。さっ、と周囲を見て確信する。よし、問題なし。
「やっぱりこういうのは男女ペアじゃないと面白くないわよ。ヒューイと行ったらリーナちゃんに悪いし、カイルは……」
「あれ? カイルはどこ行った?」
〈はぁ、先ほど『海が俺を呼んでいる』って夜釣りに行きましたが……〉
「左様で。」
「そんなわけで、行くわよジェル!」
「……はいはい。」
 言い返しても無駄だと思ったのか、諦めてジェルは腰を上げた。

 ほー、ほー
 遠くでフクロウのような声が聞こえる。月はほぼ満月だったが、今は雲に隠れ森の中は足元すら見えないほどの闇だった。
 ひょい、とジェルがあたしの肩に手をかけて引っ張る。ちなみにあたしの今の服装は赤のビキニの上にサマージャケットを羽織っているだけだ。気温が高いので寒くはないが……
「足元危ないですよ。」
 どうやら、あたしが踏み出そうとしたところに何かあったらしい。
 ライトも何もつけてないが、こいつのメガネは一種の暗視装置になっているそうだ。ズルい。
「見えてるんなら先に行きなさいよ!」
「……まあ、そうですなぁ。」
 そしてジェルを前にして歩く。
 あれ…… こいつ、全然怖がっていない。なんで? お化け屋敷苦手じゃなかったの?
 あちこちに闇が固まっている。何もいないと分かっていてもついつい色々想像してしまう。
 時折風が木々を揺らす。何が出てきてもおかしくない。
 ……ちょっと待って。もしかして怖がっているのあたし?!
 少し考え事をしたせいか、白い背中がわずかに遠ざかっていた。そしてそれが遠く離れていって見えなくなる錯覚が……
 バサバサバサッ!
 背後でいきなり羽ばたきと木の枝がなる音が響いた。
 驚いてあたしは…… その、なんだ、先に進んでいた──実際はそうじゃなかったんだけど──のジェルの腕に…… まあ、しがみついた…… わけなんだけど。
「……ラシェルさん?」
 あたしを「さん」付けで呼ぶのは皮肉るときか緊張しているときだ。今回は後者。なんて言ってるけどこのときのあたしは心臓の鼓動や悲鳴を抑えるのに精一杯だった。
 ジェルの呼びかけにもフルフル頭を振るだけだった。口を開いたら悲鳴がでそうで……
 こういうときに優しく宥めてくれるような気を使えるような奴じゃないが、どうしたらいいか分からずにボーッと突っ立っているジェルにしがみついているだけで、ゆっくりとだか落ち着いてきた。
「……大丈夫ですか、ラシェル?」
「う、うん……」
「あ〜 その、なんですねぇ。お互いの服装がふくそうですので、あまりしがみつかれると…… その一般的な男性にとって嬉しいながらも困る状況でして……」
 はっ!!
 なんでジェルごときに乙女のシークレットプレイスbPの柔らかい感触を堪能させなきゃいけないわけ?! しかも水着越しで結構感触が直に伝わって。……あ、でも、ちょっと今は離れたい気分じゃないのよねぇ……
「もしかして怖いんですか?」
 そーゆーことをダイレクトに聞くかなコイツ。でも心配している目だ。
「ねえ、ジェル。あんたは怖くないの?」
「いいえ別に。周囲に怖がるような対象はありませんし。」
「前にお化け屋敷入ったときは嫌がっていた上に怖がっていたけど?」
「……ああいう作り物のホラーっぽいのが苦手なだけです。
 どうも他人を怖がらせようとする造りについつい感化されてしまうんですねぇ。」
「あ、そう……」
「戻りますか?」
「ううん、いい。悔しいからその館だけでも見ていく。」

 ジェルと腕を組みながら──これはそう! 足元がよくないからで決して怖いなんてことないのよ──進んでいくと、開けたところに館があった。
 あちこち崩れていて、しかも蔦は絡み放題。周りは荒れ放題と、いかにもの感じを放っていた。
「──ん?」
 ジェルが一言呟いてから、目を館に向けたまま腕につけたコンピュータを操作する。
「……ふむ。」
「なしたの?」
 ちょっとジェルの呟きが不穏なものを秘めていた。こういうときは普段の涼しい顔でとんでもないことを言い出すに違いない。
「あの屋敷の周囲で磁場が乱れています。ある報告書によると……」
 言葉を切ってあたしに目を向ける。少し考えてから続ける。
「いわゆる幽霊などの霊現象の発生する場所に同じような乱れが生じるそうで……」
「マジ?」
「ええ。」
 冗談だったときは必ずここで「冗談です」というのがコイツの常だから……
「どうします? 戻ります?」
「……やっぱ悔しいから、中に入る。この科学万能時代に幽霊なんかいるわけないじゃない。」
「かも知れませんねぇ……」
 とニヤリと笑みを浮かべるジェル。こーゆーのもすげ−悔しい。

 その館の中は外見以上に荒れ放題だった。さすがに白骨がゴロゴロとまではいかないが、くもの巣や埃が充満していた。ジェルが白衣のポケットからケミカルライトのようなものを取り出し周囲を照らす。
 壁は案外しっかりしていて、外が見えるようなところもなく、ちゃんと掃除したら住めなくもないだろう。
 そう考えると、結構いい感じだ。でもどうしてこの館に誰も住まなくなったんだろう?
「さっきリーナも言ってましたが、幽霊の目撃例があって、気味悪がって誰も近づかないとか。
 確かに磁場の乱れ──霊障ってやつが良くないようです。」
「マジ?」
「ええ。
 ついでに言わせてもらえば二階の方がその傾向が強いようです。」
「へ、へぇ、行ってやろうじゃないの。」
 情けないことに声が震えている。それでも二人して階段を上がる。途中に散乱している石の破片は踊り場にあった像の破片だろう。前に来た誰かが慌てて蹴飛ばしたかなにかしたのかな?
 二階につくと、明らかに空気が違っていた。その「磁場の乱れ」って奴かもしれないけど。
 ジェルも隣で難しそうな、それでいて興味深げな表情をしている。
「こちら、ですね。」
 ジェルがスタスタと歩いていく。当然、その腕にしがみついているあたしも一緒だ。
「な、何が……」
 嫌な空気の濃度が高まっていく。意識していないと震えそうな声にジェルは素気なく答える。
「こちらが一番乱れが激しいです。もし……」
「ああああああ! ストップストップ! 何が言いたいか分かったからそれ以上は言わないで!」
 ここで逃げ帰ってもよかったけど、なんとなく最後まで見ないと気が済まなかった。ありていに言えば好奇心が恐怖心に勝ったのだろう。……というか、ジェルがいれば何があってもなんとかなる、というよく分からない確信もあったからなんだけどね。
 あたしたちが向かった方向には立派なドアがあった。朽ちかけたこの館の中で、そのドアの立派さはやけに目立っていた。そんなことも気にした様子もなくジェルがドアを開く。
 ブワァッ。
 そんな感じだろうか。今までとは濃度が違う異質な空気が向こうからあふれ出てきた。知らず知らずに恐怖で体が震える。
 今ジェルの腕にしがみついていなければ、腰が抜けて座り込んでいたかも知れない。
【誰だ……】
 不気味な声が響いた。ヒッと思わず悲鳴が出る。
 向こうにボワァ〜となにかの薄暗く光る人型のものが……!
「……なるほど。ホログラムでもないし、工学的なしかけも存在しないようです。しかも今の声は直接聞こえてくるようで、空気の振動を伴ってい音のないようです。」
 コイツってどんなときも冷静ねぇ……
生きている人間か…… 憎い、恨めしい……
 うそぉ! ホントに幽霊?! しかもなんか憎々しげにこっちを見てる〜
怨…… 憎…… 殺…… 死…… 壊…… 滅……
 ブツブツと呟いていたと思うと、急にこちらめがけて襲いかかってきた!!
 思わず目を閉じて、ジェルにこれでもかとしがみつく。なにかが振られる音。そして……
ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!
 まさにこの世の物とは思えない悲鳴。そして静寂。気づくとさっきまでの嫌な感じの空気が薄らいでいた。
「やかましいです。」
 淡々としたジェルの声に目を開ける。見上げたジェルの横顔はたまにしか見せない怖いまでの鋭い表情をしていた。怖いけど…… 怖いんだけど…… ちょっと格好いい、かな?
 と、いつもの寝ぼけたような惚けたような表情に戻る。
「ラシェル…… 腕が痛いんですが。」
「あ、ゴメンゴメン……」
 腕の力を緩める。でもさっきまでのその…… 幽霊、ってやつは……?
「斬りました。」
 とアッサリ。
「おそらく磁場で自分の存在を維持していたのでしょうから、最大出力のスタンブレードで磁界を拡散いたしました。それでなんとかなったんでしょう。」
 へぇ…… って、ちょい待ち。
「それじゃあ、スタンブレードが効かなかったら?」
「……ダッシュで逃げます。」
「…………」
 頭が痛くなってきた。
「あんたねぇ! 行き当たりばったりもいい加減にしてよ!」
「怖い、からですか?」
「う……」
 いかん、しばらくはこれでからかわれそうだ。
「ま、いいです。そろそろ戻りましょう。あまり遅いとリーナも心配するでしょうし。」
「そうね。」
 こうして帰路についたんだけど……
 あ〜あ、ジェルが驚いたり怖がったりするのを見たかったのに、なんでこうなっちゃうかなぁ……

 そして次の日の朝食のとき、
「近く漁師の方に教えていただいたのですが……」
 最初に戻る(笑)